古きよきパリの街並みと年の差男女の美しい恋愛模様「静かなふたり」監督に聞く
2017年10月16日 16:00
[映画.com ニュース]イザベル・ユペールの娘、ロリータ・シャマ主演のラブストーリー「静かなふたり」が公開された。田舎からパリへ越してきたばかりの27歳のマヴィが、祖父と孫ほどの年齢差のある小さな古書店の謎めいた店主ジョルジュと出会い、次第に惹かれあう様をパリ、カルチェ・ラタンの美しい街並みと共に描き出す、小規模ながらも味わい深い良作だ。エリーズ・ジラール監督が来日し、作品を語った。
文学少女で不器用なマヴィ役をロリータ・シャマ、謎に包まれた過去をもつジョルジュ役を「昼顔」のベテラン俳優ジャン・ソレルが演じる。
「ベルヴィル・トーキョー」に続く長編第2作で、再び恋愛をテーマにした。「愛がなかったら私達、どうすればいいの? 私にとっては、人生で一番大事なテーマ。いつも恋愛の話ばかりではないけれど、常に人間の中心にあることなのでは」と笑顔を見せる。
今作では、マヴィとジョルジュという年の差のある男女の恋愛関係を、空想的とも言える描写で映し出す。「似たもの同士は惹かれあうのです。マヴィと言う女性は19世紀のような佇まいのある、ちょっと不思議な女性。だから、ジョルジュという特別な人、孤独な生き方をしているふたりが出会うと、映画の中では必然的に愛が生まれるのです」
愛に年齢は関係はないとはいうものの、現実社会では様々な困難があり、また、ジョルジュのような理想的な男性ばかりではないことも多いが……。「ジョルジュの過去にはいろいろあって、深い愛の形、相手を守るということを知っており、若いマヴィには、その先の人生があると考えているのです。私自身の映画を作るときは、登場人物はみんな良い人にしたいのです。理想が高過ぎるかもしれませんが。現実的な映画を撮ることに興味がないのです」
古きよきフランス映画、パリに憧れる外国人がうっとりするような美しいパリが映っている。「現実の今のパリはこうではないのですけどね」と苦笑いを浮かべながらも、「私自身20年前に学業を終えてからパリに来ました。現在は美しい街並みが残るマレに住んでいます。カルチェ・ラタンに行くために、いつもサン・ルイ島を越えて行くんです。私はもともとパリに住んでいる人間とは、見る目が違うのでしょう。それが興味深いこと。見慣れた人とは違う見方で物を見るということが大事なのです」と話す。
ロリータ・シャマとは7年前に映画祭で出会い、交友を深めた。「マヴィとは間逆な性格なので、しっかり役づくりをしてくれました。ああいう風には話しませんし、髪の毛も本当はブロンドですし、ファッション、読書や文学の傾向も全く違います。けれどもルックスや声、私にとってのマヴィ像にぴったりだった。友人ですが、監督と女優として仕事をするときは、私が求めているものをすっと演じてくれる。そういった意味ではとても美しい経験になりました」と振り返る。
中堅、若手の女性監督の台頭が目覚しいフランス映画界だが、100パーセント男女平等な環境だとは言いがたいそう。「女性のプロデューサーも増えていますが、そのことで女性が仕事をしやすくなったということはありませんし、やっぱり財政的な力を持っているのは男性。女性が扱いたいテーマは、お金を持っている男性達に気に入られないことが多いと感じます。お互い、それなりの敬意はあるのですが、作ることにお金は必要なので。男性が書いた脚本と女性があれば、まるで偶然かのように、男性の書いたほうが選ばれるのです」
次回作を来年日本で撮影する予定だ。「京都を舞台にした恋愛映画で、フランス人女性と日本人男性の話です。2018年の秋に撮影して、2019年の3月末には公開できるといいと思っています。すべては資金次第ですが」
「日本は言語、文化、社会、地理的なこともすべてがフランスと違って、ミステリアスで惹かれます」と笑顔を見せる。「私が理解している日本人像は、もちろん現実とは違うと思いますが、フランス女性の夢見る日本という感じで日本に恋をしています。おだやかで、美しく、繊細で、清潔で……。言葉がわからなくても暴力的なことを受けることはない。それは素晴らしいことです。日本人がフランス語がわからず、フランスに来ると、大変なことも多いのです。日本の方に見てもらって、楽しめる作品を作りたいです」と抱負を語った。
「静かなふたり」は、東京・新宿武蔵野館で公開中。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。