ダニエル・トンプソン監督、セザンヌとゾラどちらにシンパシーを感じた?
2017年6月24日 15:00

[映画.com ニュース] 画家のセザンヌと作家のゾラの友情と決別を描いた「セザンヌと過ごした時間」が6月24日、開催中のフランス映画祭2017で上映され、ダニエル・トンプソン監督が東京・有楽町朝日ホールでのティーチインに臨んだ。
近代絵画の父と称されるフランスの画家ポール・セザンヌと文豪エミール・ゾラ。幼い頃から40年にわたり友情を育み、芸術に打ち込んできた2人だったが、立場の違い、そしてゾラが発表したある小説をきっかけに、関係に亀裂が入る。
トンプソン監督は、絵画と文学の世界で名を成した2人の関係を数年前に知ったという。「幼い頃から友情を築き、そして仲違いした。これは映画になりうるドラマチックな題材なのではないかと感じました」と振り返る。
脚本も自ら執筆しているが、子どもの頃から大人になるまで交わされていた2人の往復書簡、伝記、そして劇中に登場する、ゾラがセザンヌをモデルに執筆し関係悪化の原因となった小説「制作」などを参考資料に「史実と虚構、ゾラの小説をミックスしてエピソードを作り上げていった」と明かす。
特に激しい言葉の応酬のセリフを作り上げていくのは「ワクワクする瞬間」だったようだ。「ゾラの『制作』のセリフを拝借もしているし、ゾラがセザンヌを『開花しなかった天才』と評した言葉は、画商のボラールの回想にあったものです。そうしてセザンヌの気難しい、反抗的な人物像を作り上げることができましたし、パズルのような楽しい作業でした」と語った。
また、2人のどちらにシンパシーを感じたかという質問には、「難しいですね。2人の人物に同時に恋に落ちたような感覚でしたので」と苦笑い。それでも、「セザンヌのことはこれまであまり知らなかったので、知ることで魅了された部分があります。映画を撮りながら、セザンヌに強く興味を持ちました。非常に複雑で、性格にひずみがある、こんな魅力的な男はなかなかいないなと感じました。でも人間的にはゾラにも惹かれます。夕食をお伴するならゾラでしょうか(笑)?」と語り、会場は笑いに包まれていた。
「セザンヌと過ごした時間」は9月2日より公開。
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