健太郎、初主演「デメキン」撮影現場で見せた座長としての気迫と覚悟
2017年5月19日 19:00
[映画.com ニュース]俳優の健太郎が長編映画初主演を果たした「デメキン」の撮影現場が、2017年2月末に千葉・君津市のアクアスタジオで報道陣に公開された。クランクアップ間近だった撮影の合間を縫い、健太郎が取材に応じた。
同作は、お笑いコンビ「バッドボーイズ」の佐田正樹が自らの不良時代をつづった小説を実写映画化。10年からは「ヤングチャンピオン」(作画:ゆうはじめ)で漫画版が連載され、コミックが累計発行部数170万部を突破した人気作だ。幼少期からギョロっとした二重まぶただったために“デメキン”と呼ばれ、周囲からいじめられていた佐田正樹が、福岡最大勢力の暴走族を率いる総長へと登りつめるさまを描いている。「アルカナ」「猫侍」の俊英・山口義高監督がメガホンをとり、「14の夜」で健太郎とタッグを組んだ足立紳が脚本を担当している。
撮影現場を度々訪れていた佐田本人から「(当時の)リアルな気持ちを教えてもらった」という特攻服姿の健太郎は、身も心も“伝説の総長”そのもの。「佐田さんが楽しく生きてきた人生をないがしろにしてはいけない」という強い思いを抱えながら、キャラクターと同化していった。「正樹はただ強いだけではなくて、人を惹きつける魅力があるんです。だから総長にもなれたはず」と分析し、演技をするうえで「愛らしさを重視しました。ケンカをした後に見せる笑顔を大事にしています」と語っていた。
一方、佐田という実在の人物を演じながらも、健太郎がつくり上げたのはあくまで「デメキン」という世界で息づくオリジナルの“佐田正樹”。「佐田さんでいようとは思ったんですが、僕が演じる“佐田正樹”でありたいとも思っていたんです。劇中の出来事を実際に体験した佐田さんが抱く感情と、自分が正樹を演じる中で感じたものは別物。自分の感情は大事にしたいと思って演じました」と告白していた。
この日の撮影は、正樹が率いる福岡連合と、宿敵のチーム・蝉魔竜の全面対決を描くクライマックスのシークエンス。薄汚れた椅子やドラム缶が至る所に配置された廃墟を舞台に、両陣営が肉弾戦を繰り広げる劇中屈指のアクションが展開された。本番直前、健太郎は同チームのメンバーである高橋里恩や田中偉登らに「行くぞ!」と叫んで気合を注入。それまで和気あいあいとしながら待機していたキャストたちの表情が一気に引き締まった瞬間だった。
両陣営がズラリと横並びになってメンチを切りあう一色触発の場面では、山口監督の「殺し合いです。鬼の表情でお願いします」という掛け声がスモークのたかれた室内に響き渡った。やがて約7秒間にも及ぶ罵り合いの末、健太郎の飛び蹴りを合図に大乱闘が勃発。ボルテージが最高潮に達していた健太郎らは、スタッフが何度も「カット!」の声をかけても動きを止めないほど、凄まじい気迫を見せつけていた。
本格的なアクションに初挑戦した健太郎は「監督から、アクション練習当初から話があった通り、泥臭い感じにしたかった。がむしゃらに互いを追いかけて、当たればいいというパンチを繰り出す」ということを意識したという。そして「カメラのポジションで殴る場所が変わる」「カットがかからなかったら続けなくてはならない」といったことを学び「綺麗に動きが決まった時は本当に気持ちがいいんです。今後もアクションはやっていきたいです」と意欲をみなぎらせていた。
そして「自分たちの意見を尊重してくれる方で、それぞれのキャラクターをしっかりと理解してくれていた」と初めてタッグを組んだ山口監督へ尊敬の念を込める。「この場面ではこういうセリフを言いたいと提案させてもらったり。もちろん間違っていたら指摘してくださるんですが、撮影を進めるうちに足されていったセリフが結構あるんです」と裏話を披露してくれた。
同世代のキャストたちと固い絆を築き上げた撮影を振り返り「本当に終わりたくない」と何度も呟いていた姿が印象的だった健太郎。「大変だったことはないんですよ。全てのシーンが印象に残っています。総長という役柄もありますが、誰にも気合だけは負けたくなかった。その意識で皆を引っ張っていけたらと考えていました」という発言が象徴するように、初めて挑んだ“座長”としての覚悟が全身からにじみ出ていた。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。