「今の時代、いかにして生きるか」石井裕也監督、石橋静河&池松壮亮主演で現代詩を映像化
2017年5月12日 12:00

[映画.com ニュース] 「舟を編む」の石井裕也監督が、若手詩人・最果タヒ氏の同名詩集をもとにした最新作「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」。2020年の五輪開催に向けた再開発が進む東京を舞台に、都会で生きる現代の若い男女の空虚感と孤独、そして恋愛を、詩を引用したセリフと実験的な映像で切り取った。ヒロイン・美香役に抜擢された石橋静河とダブル主演の池松壮亮が、石井監督とともに作品を語った。(取材・文/編集部、写真/間庭裕基)
「都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。塗った爪の色を、きみの体の内側に探したってみつかりやしない。夜空はいつでも最高密度の青色だ。」(『青色の詩』より抜粋)、「私はヤれるかヤれないでしかない。ここは東京だ」「死ぬまで生きるさ」など、最果氏の詩と石井監督による突き刺さるような言語表現が、登場人物たちの心情をリアルに表現する。
石井「最果さんの詩から、今まで言葉にできなかったもやもやとした気分にどうにかこうにか触れようとしている姿勢を感じて、そこを中心とした、ボーイミーツガールの恋愛映画を作りました。セリフは最果さんの詩、物の見方をリスペクトし、最終的には僕の感覚を経て言葉を合体させて出していったというイメージ。詩の解釈は、読み手の感性や人生経験で大きく変わると思うし、変わるべきだと思う。そういう意味では割と自分の感性を使わなくてはいけなかった。そうするとおのずと個人的なものに近づいていった。自分が試されたということだと思います」
原色のコントラストを強調した都会の夜の風景、アニメーション、スマートフォン撮影を思わせる画面分割など、即興詩のような映像が観客を視覚的にも楽しませる。「原作が詩だということもあったので、感覚的に無邪気にやりました。理屈ではなく、思いついたことをどんどんやっていったという感じです」
(C)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会美香は昼は看護師、夜はガールズバーで働き、慎二は工事現場の日雇い労働者だ。石井監督はふたりの職業設定をこう説明する。「言い方は極端かもしれませんが、物事の本質の全貌を知らされないまま、朝から晩まで働かされる。慎二の仕事はそれをシンボル化したもの。一日一日与えられたものをこなしていく、それは、工事現場でなくても、どんな仕事にも近いようなイメージがある。美香は、人の生き死に常に触れているという仕事を考え、看護師という設定に決めました」
学生時代は成績優秀であったにもかかわらず、低賃金の肉体労働を仕事に選んだ慎二の言動はときにシニカルだ。池松は役づくりについて「慎二が片目が見えないことをどう変換し、何を前に出していくかということを考えました。見えないからこそ、世界を人よりも見ようとするその行為、そこからいろいろ作っていきたい」といい、「僕がこの作品とかかわったことを除いて考えても、自分の気分や、東京で生きることはどういうことなのかを、映画として表現してもらったなと」と語る。
本作が映画初主演となった石橋は「自分の人生で一番大きな出来事」と振り返る。若く美しいが周囲に迎合しない美香を好演した。「役として理解しきれない部分がものすごくあったし、準備期間も含めて嵐のような日々でした。この作品に出て、東京に対する自分の思いが少し変わりました。全部が変わったわけではないですが、なんとなく街の人に対する思いが変わったと思います」
石井監督は、大きなプレッシャーを抱えながらも美香を演じきった石橋を「常に緊張してる感じ、佇まいは演技では絶対出なかっただろうし、石橋さんに経験がなかったからこそ出来たこと。だからといって、経験がなければみんな出来るかといったらそうではない。逃げちゃう人もいるだろうから、そういう意味では、石橋さんはへこたれなかったし、彼女しか出来なかったと思う」と評価する。
不器用ではあるが、東京という街で不確かな何かを求めながら、自分の人生をきちんと生きようとする登場人物たち。一縷の光が差し込むような爽やかなラストに仕上げた。
石井「問題は、今の時代、いかにして生きるか。無視できないし、そこを目指していかなければならない。今、“希望”という言葉の価値が低下していて、希望と言うと途端に疑わしくなるような状況だと思う。“兆し”や“可能性”でもいい、何としてでも前を向いて生きていく人間の姿を描きたかったんです」
(C)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
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