荻上直子監督&石井裕也監督、ベルリンで新作お披露目
2017年2月17日 17:00

[映画.com ニュース] 第67回ベルリン映画祭で、荻上直子監督の「彼らが本気で編むときは、」と、石井裕也監督の「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」が上映され、大きな注目を集めた。
パノラマ部門とジェネレーション部門のふたつに異例の入選を果たした荻上作品は、15日に1回目の公式上映があり、約800席の会場が満席に。4度目のベルリン参加を果たした荻上監督、主演の生田斗真、桐谷健太、子役の柿原りんかが上映前に登壇した。この日がたまたま誕生日だった荻上監督に、同部門のディレクターが花束を渡し「再びこの映画祭に戻ってきてくれてとても光栄です」と紹介。荻上監督も、「またこの映画祭に参加でき、わたしのことを受け入れてもらってとても嬉しいです」と挨拶した。
続いて生田が英語で「わたしがリンコ役を演じました生田斗真です」と挨拶をすると、アジア人も多数集まった会場からは歓声が。一方、桐谷は観客に向かって投げキスを披露し、「みなさん英語なので、僕は日本語で挨拶します。最高の作品になったので、今日は楽しんでください」と語った。最後に12歳の柿原が用意してきたドイツ語の挨拶をすると会場には再び歓声があがった。
本作はトランスジェンダーの主人公とボーイフレンド、彼の姪(めい)の3人が、偏見に抗いながら疑似家族を形成していく様子を、ときにユーモアを交えながら描く。上映後の取材で荻上監督は、「とても観客の反応がよく、笑って欲しいところで笑いが起きた。一方でキャラ弁(当)が受けるなど、思ってもいないところでの反応もあった」と明かした。生田は「通りで地元の人に『良かった』と声をかけられて嬉しかった。今回オリジナルの脚本作品に出られたことはとても刺激的で、唯一無二の荻上ワールドが素晴らしいと思いました」と語った。ベルリンには伝統的にLGBT映画に与えられるテディ賞がある。ベルリンに馴染み深い荻上作品が審査員にどう評価されるか、興味深いところだ。
フォーラム部門に入選した石井監督作では、監督とともに主演の池松壮亮、石橋静河がベルリンに参加。3回の上映に伴いQ&Aを行った。物語は日雇い労働をする青年と昼は看護師、夜はガールズバーでバイトをする孤独な女性の触れ合いが、東京という雑多な顔を持つ街を背景に描かれる。もともと最果タヒ氏の詩から石井監督がインスパイアされたというストーリーはきわめてオリジナルで、現代の東京の住人が抱える鬱屈やストレス、生き難さをユニークな映像スタイルとセリフ、ナレーションで浮き彫りにする。それだけに一般観客が参加するQ&Aは白熱し、東京の生活環境や社会保障などにも質問が及んだ。
観客のなかには「日本で挫折してドイツに移住したので、映画にとても共感する」といった声もあった。こうした反応について、石井監督は「ベルリンに生きていても東京でも、どこかで近い要素を感じているというような反応があり、とてもうれしかったです」とコメント。池松は「今の東京に住む若者としてどういう生きづらさを持って生きているかということを、感覚的に表現できたらと思っていました」と語り、観客の熱のある反応に感銘を受けた様子だった。(佐藤久理子)
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