「天才バレエダンサーの皮肉な運命」でプロと見まがう華麗な踊りを披露しているのは?
2016年11月4日 17:00

[映画.com ニュース] ロシア映画「天才バレエダンサーの皮肉な運命」が第29回東京国際映画祭のコンペティション部門で上映され、アンナ・マティソン(監督)とセルゲイ・ベズルコフ(プロデューサー/俳優)が来日した。人気俳優ベズルコフが出演する本作は、偏屈な性格が災いして辛酸を嘗める天才プリンシパル、アレクセイ・テムニコフの姿を通して、バレエの尽きせぬ魅力を謳いあげる。超絶的カメラワークで、「市民ケーン」を彷彿させる皮肉に満ちた運命が浮き彫りになるマジカルな作品でもある。
セルゲイ・ベズルコフ(以下、ベズルコフ):ビソツキーは42歳で亡くなりましたね。私は38歳の時に彼を演じましたが、今年43歳となり彼の享年を越えました。ともあれ、実在した人物を演じるのは大変な重圧を伴います。真実の彼はこうだったと演技で証明するわけですから。今回、私が演じたのは想像上の人物ですが、ロシア国内で面白い現象が起きました。本作が上映された日に、グーグルで「アレクセイ・テムニコフ」という名前の検索件数が軒並み増え話題になったのです。実在の人物だと思い、皆さん調べようとされたのですね。こんな風に社会現象にまでなったのは監督のお陰です。テムニコフは下劣極まる人物ですが、物語が進むにつれて、観客は彼のことを理解して愛さないではいられなくなるという難しい役柄です。課題をクリアするのは大変でしたが、映画祭の観客の反応を見て、ようやく成し遂げたんだと思いました。
ベズルコフ:振付師のラドゥ・ポクリタル(2014年ソチ五輪で演出を担当)に教えを請い、2週間程リハーサルを行いました。名プリンシパルのデニス・マトビエンコにスタント・パフォーマーをしてもらい、このふたりと監督で私の踊りをどこで使うか検討しましたが、「ほぼ9割方は君が自分で踊ればいい」とポクリタルが太鼓判を押してくれました。マトビエンコの踊りを使ったのはジャンプの瞬間など一部に留まっています。
アンナ・マティソン監督(以下、マティソン監督):上層部と特別親しいわけではありません。演奏家から裏方まで、マリインスキー劇場の団員はいつも大変な仕事をしていて、ふだん映画の撮影に協力したり場所を提供したりすることはまずありませんが、私たちが畏敬の念を込めてこの作品の構想を話したら幸いにも受け入れてくれたのです。
マティソン監督:カメラワークは全て脚本をもとに編み出していきました。前半の、主人公テムニコフの1日を描くパートでは、ノーカットのかなり長いロングテイクを駆使しています。ここでは彼のあるがままの日常が描かれます。この男は自分の人生を生きているのではなく、ただ虫けらのように生きているに過ぎない。そのことを示すために長回しを用いました。次に「WEEK(1週間)」とテロップが出て第2部に入ります。ここから編集を用いたカット構成が始まり、第1部の2倍の速さで場面を構成しています。そうすることで、テムニコフが行動を起こし始めたことを示そうとしました。最後に「MONTH(1カ月)」と出て第3部が始まります。ここは非常に速いテンポを心掛けました。第1部の5倍程度でしょうか。このパートに彼の人生は凝縮されているのです。
マティソン監督:一般に映画全編に音楽を流す場合は保険を掛ける意味合いでそうすることが多いのですが、この作品はそうではなく、演技やストーリーに合わせて音楽を選んでいきました。音楽を用いて、天気のように変わるテムニコフの内面を表現しようとしました。
ベズルコフ:マエストロは本当に心のこもった思いやりのある方です。彼にとって私たちは若輩者にすぎないのに、演技も含めての出演を提案したら快諾してくれました。さらには、ストラヴィンスキーの「3楽章の交響曲」をバレエ化して映画に挿入する案まで受け入れてくれて、これをマリインスキー・バレエのレパートリーに加えてくれたのです。もう本当に信じられないくらい幸運なことです。
ベズルコフ:実はついさっきマエストロから電話があって、「どうだね? 日本での反響は」と言うんです。作品を気にかけてくれている証しです(笑)。
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