クロアチアの新進女性監督、演技初挑戦の主演女優を“一目ぼれ”で起用!
2016年10月30日 15:15
[映画.com ニュース] 第29回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「私に構わないで」が10月30日、東京・TOHOシネマズ六本木でアジアンプレミア上映され、長編初メガホンをとったハナ・ユシッチ監督と主演のミア・ペトリチェビッチがティーチインに臨んだ。
映画は、舞台となるクロアチア有数の観光地・ダルマチア地方の美しい情景と対比するかのように、窮屈で雑然としたアパートで暮らす家族に焦点を当てた物語が展開。強権的な父、障がいを抱えた兄、無責任な母親と生活しながら、病院で働くマリヤナ(ペトリチェビッチ)。ストレスの絶えない日々に嫌気がさしていた時、父が突然倒れたことで、家族の長としての責任を押し付けられてしまう。
緊張の面持ちで登壇したペトリチェビッチは、本作で演技初挑戦。ユシッチ監督は、「海岸にいた彼女を見た時点で、ほかの女優を探すのをやめたわ」と運命的な出会いだったことを明かし、「クロアチアでは、演技未経験の人が役を演じるとオーバーリアクションになってしまうの。ペトリチェビッチはプロの女優ではなかったけど、芝居がとてもナチュラル。きちんとキャラクターの本質を捉えていたわ」と絶賛した。
口数が少なく、表情で内面を語るマリヤナの人物像について質問が出ると、ペトリチェビッチは「かなり複雑な役柄。監督との話し合いはもちろん、役者だった私の恋人とプライベートレッスンをしながら、キャラクターを構築していったの」と明かした。「父からも言われたのですが、本作への出演は小さな奇跡。監督は素晴らしい女性で、私をゆっくりと映画の世界へ導いてくれました」と最敬礼だった。
ユシッチ監督は、「自伝的な物語ではありませんが…」と前置きし、「舞台となっているのは私の故郷。町の人々のメンタリティ、そして独特のカリスマ性を持つ女性の姿が描きたかったの」と話した。「さらに言えば、物語を通じて『自由や再出発というものは幻影なのではないか? 結局はどんな人間も家族や周囲の人々との関係の影響下で生きていくのではないか?』という部分も問いたかった。自由というものは、ハリウッド映画によって過大評価され過ぎていると感じています」と解説した。また、窮屈なアパートで家族とともに生活しているマリヤナを例に挙げ、「実際のところ、若者たちは親の援助がなければ家を買うことはできません。三世代にわたって同居していることも」と、クロアチアで生きる人々の現実も明かした。
第29回東京国際映画祭は、11月3日まで東京・六本木ヒルズほかで開催。
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