インドネシアの俊英監督、自国の一夫多妻制を語る「犠牲になるのは必ず女性」
2016年10月28日 06:00

[映画.com ニュース] 長編デビュー作「鏡は嘘をつかない」で世界的な注目を集めたインドネシアの俊英カミラ・アンディニ監督による「ディアナを見つめて」が10月27日、第29回東京国際映画祭の特集企画「国際交流基金アジアセンターpresents『CROSSCUT ASIA #03 カラフル! インドネシア』」で上映され、アンディニ監督と主演のライハアヌンがTOHOシネマズ六本木ヒルズでのティーチインに出席した。
インドネシアの“一夫多妻制”を女性の視点から描き、夫から「第2夫人を迎えたい」と告げられた女性ディアナが、第2夫人らとの生活を通じ苦悩するさまを映し出す。アンディニ監督は「この映画は非常にパーソナルな作品です」と口火を切り、「この作品を撮っていた2年前、私は結婚し子どもができたばかりでした。社会のなかで女性が妻、あるいは母であることとはと疑問を感じていて、そのことを描いています」と説明した。
観客から同国の一夫多妻制の現状を問われると、アンディニ監督は「インドネシアはムスリムが大半で、その信条に基づく一夫多妻制が実際にあります」と明かす。ひとりの男性が4人の女性をめとることができるそうで、「正確な割合は存じ上げないですが、非常に一般的なことです」と話した。
一方で「国内ではあまり堂々とは行われず、話題にもしないので問題が表面化しません」とも語り、その理由は「憲法と宗教のダブルスタンダード」にあるという。「(一夫多妻制の妥当性は)憲法に記載されているわけではありません。男性の2回目以降の結婚は法律では認められていないですが、宗教では書類を発行してもらえます」と述べ、「犠牲になるのは必ず女性で、こういう状況に陥る辛苦を描きたかったんです」と言葉に力を込めた。
ディアナ役を熱演したライハアヌンは、「私自身がディアナの状況に陥らないことを祈るばかりですが、共感せざるを得ないですね」といい、「インドネシアでは一夫多妻制で『女性が犠牲になる』という意識がいまいちないんです」と打ち明ける。そしてアンディニ監督は、「ムスリムでは、一夫多妻制に理解がある女性は偉いとされています」と自国の価値観を説き、「第1、第2夫人がどうかではなく、男性がどうなのかという視点で見ていただきたいです」と呼びかけていた。
なおこの日は、「動物園からのポストカード」などで知られるエドウィン監督による「舟の上、だれかの妻、だれかの夫」も併映された。第29回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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