イタリアの名女優オッタビア・ピッコロが来日 労働者の尊厳描く社会派作品を紹介
2016年10月26日 19:00
[映画.com ニュース] 第29回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「7分間」(ミケーレ・プラチド監督)が10月26日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、主演のオッタビア・ピッコロと共演のアンブラ・アンジョリーニが会見した。
フランス企業に買収されたイタリアの繊維工場が舞台。新しい経営側は、女性労働者たちの雇用契約継続の代わりに7分間の休憩時間短縮を提案する。職を失いたくない労働者の大半は簡単に合意しようとするが、リーダー格の女性が異を唱えることで、労働者たちの意識が変わっていく姿を描く、イタリア、フランス、スイス合作の社会派ドラマ。
女性労働者の代表ビアンカを演じたピッコロは、1970年にカンヌ映画祭女優賞を受賞した、イタリアを代表する名女優。今作が実話を基にしたフランス人作家の戯曲が原作だと紹介し、「実際にはフランスの繊維工場で働く女性たちが、この映画のように闘いました。7分間休憩を削るかどうか迫られ、彼女たちはノーと言いました。自分たちで株式を買って、経営しようと考えましたが、銀行から融資が受けられず、工場は閉鎖となったのです。イタリアでも経営権が変わることで、労働者が解雇に追い込まれることはよくあること。映画でこの事実を訴えることができれば」と作品の主題を語った。
アンジョリーニは、大胆なタトゥーを施したパンクスタイルの、反骨精神あふれるグレタという女性を演じている。「強く、大きな怒りを持ち、女性としても深みを持っているこの女性が好きです。自分の言いたいこと言い、相手の思いのままにさせないという自身の尊厳と正義感が強い女性です。映画では、単純な言葉にだまされず、提案を超えて、大きな意味を得ようとする女性たちを描いていると思います」と自身の役どころを説明。今作に出演したことで、労働者への意識が変わったかと問われると、「私の父も母も工員でしたし、父は今でも工員です。私は女優ですが、女優という仕事も工員だと思っています。労働者であることはハートを持つことだと思っています」と答えた。
不況下で、高くはない賃金でも働き続けたい理由がある女性たちが、経営側の要求を受諾するか否か、白熱する議論を臨場感たっぷりに映し出す。現場では3~4台のカメラで撮影したそうで、「私がこれまでが知っている映画とは違い、舞台に似て、みんなが役に入っていないとできないような撮り方。私は舞台の経験が長いので、やりやすかった。今までとは違う力を与えてくれた映画になった」(ピッコロ)、「皆が同時に会議に巻き込まれ、全員が決断をしなくてはならないという風に撮りました。外面ではなく、内面にあるものを映し出すような撮影を心がけていました」(アンジョリーニ)と振り返った。
東京国際映画祭は11月3日まで開催。
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