「アルビノの木」金子雅和監督、構想から8年越しの公開に感無量 大自然を捉えた映像へのこだわり語る
2016年7月17日 12:00
[映画.com ニュース] 金子雅和監督の長編第2作「アルビノの木」が7月16日、テアトル新宿で公開初日を迎え、金子監督とともに、松岡龍平、東加奈子、山田キヌヲ、増田修一朗、尾崎愛、松蔭浩之、細井学、松永麻里、山口智恵が舞台挨拶に登壇。2008年の長編デビュー作「すみれ人形」発表直後から本作の構想を温めていたという金子監督は「スクリーンで公開できるまで8年もかかってしまったが、本当に感無量」と喜びを語った。
農作物を荒らす害獣駆除に従事する主人公ユクが、かつて鉱山として栄えた村で、神のように崇められている白鹿を秘密裏に撃つ高額報酬の仕事を引き受ける。病気の母の手術費捻出のために、村人が大切にしてきた特別な存在を撃たなければならないユクの苦悩を描く。
山間の渓流や滝など壮大な自然の姿を捉えると同時に、人間たちが抱える物語を厳かな映像でつむぎだしている。「自分の世代の等身大の役を演じられて幸せだった」と話す主演の松岡は、長野県須坂市をメインとしたロケを振り返り、「過酷の一言につきる。川の中の撮影が10月後半で、寒くて風邪を引くどころではなく、命の危険を感じるくらいの現場だった」と述懐。しかし、苦労の甲斐あって「作品として出来上がったものを見たときに期待以上に美しい画で感動した」と満足げに感想を語った。
ヒロインのナギを演じた東も、ロケでの苦労を強いられたそうで「撮影初日に、1メートル先も見えないほどの霧の山の頂上に連れて行かれ、監督から軍手を渡されて『ロープを使って山を下りてください』と言われた。軍手を渡された撮影は初めてですし、監督は優しい感じなのに、そういうこと言っちゃうんだ、大変な現場に来たんだなと思った」とこぼし、会場を笑わせていた。
そんなキャスト陣の発言を受けた金子監督は「劇映画の場合、人間が中心になるので背景は背景でしかないのが普通。でも自分は、背景の部分も一つの画として、人間以外にも存在しているということを見せるように考えて撮っています」と映像作りへのこだわりを明かした。
害獣駆除会社の社長を演じた現代美術家の松蔭は、「2年前に脚本を見せていただいた時に、放射能の影響も絡んでいるし、現代のいろんな問題が金子流のファンタジーの中にリアルに描かれている秀逸な物語だと思った。どんな役でもよいから関わりたかった」と俳優としての本作参加の理由を述べ、「みなさんに応援してほしい作品」と呼びかけた。
22日までの上映後に、ベテラン猟師役を演じた長谷川初範、金子監督が師事した瀬々敬久監督、作家の乙一氏らゲストが参加するトークイベントが連日行われる。7月29日まで限定公開。イベント詳細は公式HP(http://www.albinonoki.com/)で告知する。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。