佐藤健&永井聡監督、世界遺産・イグアスの滝での撮影に思い馳せる
2016年5月14日 06:00
[映画.com ニュース] 主演としての責任、覚悟をこれまでにないほど背負ったからこそ、手綱を緩めずに走り切れた実感がある。佐藤健が「世界から猫が消えたなら」を勝負作と位置付ける根拠だ。全編にわたって出演シーンがあり、しかも1人2役、初の海外での撮影など次々と高いハードルに挑んだ熱情を、永井聡監督が丁寧にすくい取りスクリーンに照射した。
2013年刊行の「世界から猫が消えたなら」は、映画プロデューサーの川村元気氏の処女小説。佐藤は出版当時に読んだ際、主人公「僕」の年齢設定が30代だったこともあり出演オファーには驚いたが即決だった。
「もう、すぐ。すぐですよ。2秒くらいですね。ぜひ、お願いしますと。やはり川村さんというのが大きかったですね。『バクマン。』で仕事をした時に、この人と映画を作りたいと思える方だったので、断る理由が全くありませんでした」
突然余命を告げられた郵便局員の僕。だが、目の前に現れた「悪魔」から「大切なものをひとつ消せば、1日の命をあげる」と持ち掛けられる。悪魔は原作では僕と異なる容姿だが、結果的に指の長さが違う以外は同じ姿になった。
佐藤「最初は特殊メイクかな、みたいにいろいろと考えたんですけれど、監督と初めて会って話した時に全く一緒でいきたいと。それはそれで面白いかなというところから入り、悪魔の細かいテンションや芝居についてはリハーサルをやらせてもらったりしながら、けっこう時間をかけてつくっていきました」
撮影は北海道・函館でのロケからスタート。佐藤はほぼ出ずっぱりの役どころのため、撮休日以外は毎日現場に立った。
「疲れますよ(苦笑)。共演者も自分、もしくは猫なので孤独感もあったし、けっこう大変でした。もう、気合いでしたね。糸を緩ませないでやるのは、根性です」
僕は電話、映画、時計と消していくことで生きながらえる半面、失ったものの大きさに気づいていく。回想で描かれる、かつての恋人・宮崎あおいとのアルゼンチン旅行のシーンは切なさを増大させる効果を発揮。特に世界遺産で世界3大瀑布(ばくふ)に数えられるイグアスの滝の映像は壮観だ。
「原作にもイグアスが出てくるので、ずっと気になっていたんです。実際に行くことが決まって、そうでなくちゃと思いました。行くのはめちゃめちゃ大変でしたけれど、自然と高揚感がありました。イグアスは本当にすごいですよ。世界に素敵な場所や美しい場所がいろいろある中で、ただただエネルギー量だけで押し切ってくる感じが、すごく格好いいなと思いました」
ロケハンで1度行っている永井監督にとっても貴重な体験だったようだが、世界的な景勝地とあって相応の苦労もあったようだ。
「プレッシャーも大きかったですけれどね。雄大さに飲まれて舞い上がっちゃうといい演出ができない。時間もない中での一発勝負で、彼らが芝居をしている時も観光客が入ってきたのですが、2人とも集中力を切らさずにやってくれたので助かりました」
佐藤はこのイグアスの滝でのカットを持ってクランクアップ。安ど、達成感はそれまでの出演作の比ではなかったという。
「自分がダメだったら映画もダメだと思っていたのでプレッシャーも大きかったし、しっかりやらないとという気持ちも他の作品と比べても大きかったので、終わった時はひとまず良かった、と。最後まで糸を緩めず、ベストを尽くせたという意味では手応えはありました」
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