「シビル・ウォー」はマーベル版「セブン」!? 監督・ルッソ兄弟の真意とは…
2016年4月28日 05:00
[映画.com ニュース] 「アベンジャーズ」の活躍を中心に、シリーズ全体の世界観=ユニバースを拡大してきたマーベル・スタジオ。新たなフェーズの幕開けとなる「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」では、アベンジャーズの中心人物2人の対立が、最強チームを二分するバトルへと発展。政治的なすれ違いで生じた亀裂は友情を引き裂き、極めてパーソナルな激突へと姿を変える。現時点でのシリーズ集大成のメガホンをとったジョー&アンソニー・ルッソ兄弟が、米ロサンゼルスで映画.comのインタビューに応じた。
「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」に続き監督を務めたルッソ兄弟は、本作の核は心理スリラーだと断言する。念頭に置いたのは「セブン」。「破滅的で、避けることができない暴露に向けて突き進んでいくからだよ」と弟のアンソニーは明かす。「恐ろしい事件にたどり着いた人間がどのような反応をするか」という緊張感を追う点から、「ファーゴ」や「ミッドナイトクロス」も例に挙げた。本作の到達点は、キャプテン・アメリカ、アイアンマン、ウィンター・ソルジャーの対立。これは「心理状態や感情についての対立」であり、3人を互いに戦わせることが「僕らにとって常にこの映画のハートだった」という。
なぜなら、そこには複雑な関係があるからだ。クリス・エバンス演じるキャプテン・アメリカがファンから愛される理由は、“一途さ”と“信頼”にあり、その最たる例が「(暗殺者へと改造された)ウィンター・ソルジャーの心に手を差し伸ばし、本来の人間性を連れ戻そうとしている」ことだとアンソニーは読み解く。70年を経て現代によみがえったキャプテン・アメリカは、同じ境遇のウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)が「過去の人生から残された文字通り唯一の人間」になったことで、旧友への思いを深めていく。キャプテン・アメリカが「謙虚で希望にあふれている」一方で、ロバート・ダウニー・Jr.演じるアイアンマンは「シニカルで我の強い」と比較。そんなアイアンマンが、自分の父親がキャプテン・アメリカに心酔していたことで「どれほどフラストレーションを感じていたかを話すとても正直な瞬間」では、観客に共感をもたらすような「とても興味深い内面」が描き出されたと語る。
中心人物だけでなくサブキャラたちの心理もしっかり掘り下げたルッソ兄弟が仕掛ける、もうひとつの大きな見せ場が、アイアンマンチーム対キャプテン・アメリカチームが真っ向勝負する空港での決戦だ。ワクワクするマッチアップがてんこ盛りのアクションシーンでは、スタジオの垣根を越えてアベンジャーズ入りを果たしたスパイダーマンも大活躍する。兄弟そろってコミックファンだというが、兄のジョーは子どもの頃の一番好きなキャラクターの魅力を「もろさと、若さ」「とても面白いのに、本人はそれを自覚していないこと」だと声をはずませる。来夏公開の「スパイダーマン ホームカミング(原題)」に先駆けての登場となった、新星トム・ホランド演じるスパイダーマンは、大人のヒーローたちとコントラストをなし、「行き当たりばったりだけど、なんとかベストを尽くすんだ」とその健闘を描写した。
シリーズ通算13作目にあたる本作では、筋金入りのファンはもちろん、シリーズを見たことがない「新鮮な目」を持った観客でも楽しめるよう「ストーリーが分かりやすいものであるように気をつけた」とアンソニーは語る。ハリウッドではヒーロー映画の氾濫を批判する声もあるが、「興味をかきたてられ、あらゆる感情や思考を経験できる映画」を「幅広い観客に見てもらえること」が2人とっては大切だという。「僕らのお気に入りの映画は、何度も何度も見ることができる作品なんだ。だから、見直した時にも発見があって、かみしめたり、考えたり、楽しめたりするものがぎっしり詰まっていて、幾重にも層がある映画をつくろうとしているんだよ」。その言葉通り、ヒーロー映画の領域を突き破る快作を生み出したルッソ兄弟には、「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」2部作という、さらなるユニバースの開拓が待ち受けている。
「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」は4月29日公開。
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