シャーロット・ランプリング主演、熟年夫婦の愛の危機描く「さざなみ」監督に聞く
2016年3月30日 17:00
[映画.com ニュース]第65回ベルリン映画祭銀熊賞(主演女優&男優賞)をダブル受賞した、シャーロット・ランプリングの主演作「さざなみ」が4月9日公開する。結婚生活45年目を迎えた夫婦に訪れた愛の危機を描いたアンドリュー・ヘイ監督が作品を語った。
週末に結婚45周年の記念パーティを控えるジェフとケイト。しかし月曜日に、かつて山岳事故で死んだジェフの恋人に関する手紙が届き、二人の関係を大きく揺るがしていく。男女の結婚観と恋愛観の埋められない溝と決定的な違いを描いた。
「価値観が違うことを突きつけられた人が、それでも生きて行く様を描きたかった。我々人間にとってそれ以上に辛いことはないと思うのです」と、作品のテーマを語る。夫の過去が、妻の心を蝕んでいく様を巧みに表現した。「サスペンスを超えるような感覚をナチュラルに描きたかった。一歩離れてみないと分からないというのが人間の面白いところ。ケイトとジェフもそうやって人生を振り返ってみた時、ジェフは自分の伴侶はケイトしかいないと気付いて満足を得たが、ケイトはそうではなかった。二人が感情を抑え込みながら生きていることを表現するために、静かな雰囲気を心掛けました。カメラもあまり動かさずに撮影し、二人を同じフレームに入れて、感情の揺れやボディランゲージはきちんと見えるように考えました」
夫婦を演じたランプリングとトム・コートネイという名優二人については「とても立ち振る舞いが自然でした。一方、彼らのようなベテランでも、新たな役を演じることは怖いと感じるということを知りました。怖いというのは緊張をするという意味ではなくて、役をどのように自分で解釈をして演じてよいのかということ。二人とも知識が豊富なので、より一層深く考えていたようです。それをどうやってガイドしていくかが監督という仕事でした。ランプリングはとても強い人だけれど、同時に弱さも持っている。強い女性が壊れていくという主人公のキャラクターにぴったりでした」と振り返る。
主人公の心情をリアルに表現したラストシーンについてこう語る。「順撮りで撮影したので、俳優は次のシーンでどういう気持ちでいるかをより明確に感じながら演じることができたと思います。ラストシーンも、そういった積み重ねの結果生まれたもので、こういう風にするという感情はあらかじめ決まっていましたが、それをどうやって表現するかは、ランプリングとお互いの意見を出して決めました。8テイク撮って、最後のテイクを撮った瞬間、これだ! と思ったのです」
「さざなみ」は4月9日、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開。
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