ロックドキュメンタリー監督が明かす「ザ・デクライン」3部作への思いと新作構想
2016年3月18日 19:30

[映画.com ニュース]1980~90年代の米ロサンゼルスの音楽シーンを追ったロックドキュメンタリー「ザ・デクライン」3部作が、昨年6月にアメリカで初ブルーレイ・DVD化されたことを受け、3月19日から期間限定で日本に上陸する。シリーズでメガホンをとったペネロープ・スフィーリス監督が、当時を振り返るとともに現在の思いを明かした。
鋭い描写、優れたライブ撮影を武器に、「ザ・デクライン」(86)でパンク/ハードコアバンド、「ザ・メタルイヤーズ」(88)でヘビーメタル、「ザ・デクラインIII」(98)でガターパンクスといった新しいムーブメントを浮き彫りにしていく。
異なる音楽ジャンルを見つめた同シリーズは「人間観察、ある世代の若者についての人間の行動をとらえた映画」だ。スフィーリス監督は「彼らの基準とは何なのか、彼らの思考とは。これが私が最も興味を惹かれる事柄です。音楽はその背景にあるもの」と持論を展開。さらに「パンクとメタルはまったく異なると言いますが、たしかにある意味ではそうです。でも『ザ・デクライン』シリーズに関してはその違いというのは全く意味を成さないものです。なぜなら最も映画でとらえたいと思っているのは人間の行動に関する考察、研究」と80~90年代の音楽とその世界に生きる若者の生態をとらえた。
第1作は顔見知りのバンドを中心に撮影し、伝説的ロックバンド・フィアーのメンバーによるケンカなど、当時の空気がそのまま閉じ込められている。「題材がパンクロックだったこと、そしてドキュメンタリーだったこと」から配給は厳しかったが、「ハリウッド・ブルバードの劇場でたった1回の上映を行いましたが、劇場に収まりきらないほどの客が殺到したことで、バイクに乗ったロス市警の警官が300人駆けつけ」、警察から上映禁止を通達されるまで騒動は発展する。
続く第2作は、予定されていたガンズ・アンド・ローゼズの出演はかなわなかったものの、オジー・オズボーンらヘビーメタルシーンを代表するミュージシャンが登場するほか、今年1月に急死した故レミー・キルミスターさん(モーターヘッド)のインタビューに成功。スフィーリス監督は「レミーと仕事をするのは最高でした。なぜ彼がそんなに最高かというと、彼のハートはまさにパンクだから。私のすべての質問に対し、彼は最高にカッコいい返答をしてくる。彼はパンクとメタルのコンビネーションにおける究極の存在。ああ、レミーに神の祝福がありますように」と思いを馳せた。

移り変わるロサンゼルスの音楽シーンと向き合い、「パンクロックはとても影響力を発揮するものになるだろうと思っていました。私にとってロックンロールの世界でこれほど大きな変革を感じたのは生まれて初めてでした」。「パンクロックの基準と倫理観」は不変であるとしながら、「『ザ・デクライン』のときは一種のアートなムーブメントであり、伝統をぶち破る実験のようなニュアンスもありました。しかし3作目のときには単にサバイバル、生存競争のようになっています。『ザ・デクラインIII』のパンクスたちは彼らのパンクロックの哲学、道徳に頑なです。そしてその生き方に忠実であるがゆえに生活が困難になる。彼らはけっしてセルアウトしない」と述懐した。
そんな音楽シーンの熱を閉じ込めた同シリーズは、音楽ファンの熱狂的な支持を受けパッケージ化を望む声も多かったが、「完璧に出来ないのではないかという恐怖心と作業量に対する恐怖心」から踏み切れなかったという。しかし、「正規リリースがない時期は多くのブートレッグ盤などが存在していて、ひどいクオリティでこれらの作品を見てもらいたくなかったので海賊盤撲滅も大変でした」と障害を乗り越え完成したブルーレイ・DVDは、ファンのコレクションとしてだけでなく劇場での再上映を可能とした。
今回、日本では「ザ・デクライン」は30年ぶり、「ザ・メタルイヤーズ」は27年ぶり、「ザ・デクラインIII」は完成から18年を経ての初上陸となる。「また日本で上映されることに興奮しています」というペネロープ監督は、現在新作の企画を温めているそうで、「『ザ・デクライン4』は進行中です。(3部作ブルーレイ化のプロデュースを手がけた娘の)アナとともにやっています。でも今ではiPhoneで誰でもすぐに撮影できてしまうので、今はその題材が何かは明かせません。ファンの皆さまに早く届けられるように頑張ります」と明かした。
「ザ・デクライン」「ザ・メタルイヤーズ」「ザ・デクラインIII」は、3月19日から東京・新宿シネマカリテ、26日から渋谷HUMAXで期間限定レイトショー上映。
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