アピチャッポン・ウィーラセタクン、幻の傑作「世紀の光」劇場初公開を前に日本のファンにメッセージ
2016年1月8日 17:00

[映画.com ニュース] タイの映画作家アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の“幻の傑作”と呼ばれる「世紀の光」(06)の1月9日からの日本初公開を前に、ウィーラセタクン監督がタイ・チェンマイの自宅でインタビューに応じた。
「世紀の光」は、前半は地方の緑豊かな病院、後半は近代的な白い病院と舞台が2つに分かれており、医師の恋の芽生えなどのエピソードを軸に、自然の光と人工の光を対比させながら、壮大でユーモアあふれる独特な世界観を描く。日本のバンド「NEIL&IRAIZA」の楽曲がエンディングに使用されている。
「とても嬉しく思っています。この映画は愛についての映画です。当時面白い事に現場クルーの多くが恋をしていたのを覚えています。また僕にとって、この映画は様々な記憶のミクスチャーで、僕の好きなものがたくさん詰まっているんです。僕がこの映画を愛しているように、日本の観客にも気に入ってもらえたら嬉しいですね」
「“シンドローム”という言葉は、たとえば恋に落ちるといった人間の行動を指しています。恋に落ちることが病気の一種なら、僕たちは皆この病気にかかっていますよね。また“センチュリー”は、前へ進んでいくという意味合いです。物事が時間の経過とともに変化すること、そして変化しないことに興味があるんです。タイ語のタイトルにある“光”は映画のコントラストにも関係し、前半は太陽のポートレートで、また生命がいかに太陽の光に支えられているかを描き、そして映画の後半は、人工の光によって支配されていることを描いています」
「まず、二つの異なる病院を出してその対比によって語ろうというアイデアがありました。僕の両親は医者で、子どもの頃の僕の世界は、両親が働いている病院、家族で住んでいた病院の居住区の一角、学校、そして映画館でした。僕が育ったのは、映画の中に出てくる古臭い方の病院で、自分が映画作家になって久しぶりにそこに戻った時に、その場所が、自分が知っているその場所とは全然違うものになってしまったという体験をしたのです。それが二つの病院のコントラストのヒントになりました」
「僕が育った町はコーンケン(タイ北東部、ラオスの近く)といって、父はそこで亡くなり、母は今もそこに住んでいます。この映画の撮影場所を探すためにコーンケンに戻った時、確かに両親が働いていた病院は見つけたのですが、あまりに変貌していて自分の記憶通りではなかったので、違うところで撮影しました」
「僕は機械というものに魅了されています。それから黒い穴。ブラックホールとも言えるかもしれないですが、ロケーションで見つけたあの穴に刺激を受けました。この映画全体が、あの穴の中の過去の暗闇から生まれ、そしてまたそこに回帰していくようなイメージです。僕にとっては『2001年宇宙の旅』のモノリスのようなものかもしれません」
「実は、これは僕が大好きな曲なんです。個人的にはジョギングするときに聞いている曲で、この映画の最後のみんなで体操をするシーンのエネルギーレベルに、とても合っている曲だと思います。そんなことを思って選んだのですが、自分で彼らに手紙を書いて使用させてもらいました」
なお、1月9日の「世紀の光」公開同日から特集上映「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016」が、シアターイメージフォーラムで開催され、3月には最新作「光りの墓」公開、さらに「さいたまトリエンナーレ2016」や東京都写真美術館での個展など多数のアート活動が予定されている。
(C)2006 Kick the Machine Films
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