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近藤芳正、舞台「ライン(国境)の向こう」で“初物尽くし”の2015年総仕上げ

2015年12月16日 07:30

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近藤芳正
近藤芳正

[映画.com ニュース]俳優の近藤芳正が、今月17日に開幕する舞台「ライン(国境)の向こう」(27日まで、東京芸術劇場シアターウエスト)に出演。“初物尽くし”だった2015年を締めくくる。

史実を扱った作品で注目を集める「劇団チョコレートケーキ」と、自身の「バンダ・ラ・コンチャン」の合同公演。近藤が、13年に同劇団の「親愛なる我が総統」を観劇し、「自分たちより若い世代の人たちが昭和やそれ以前の歴史に興味を持って、そこでドラマを作ろうとする姿に邪気がなく、市井の人や有名な人でも弱い部分を見せるというところが本当にピュアだなと思った」と興味を持ったのが始まりだった。

同劇団の主宰者で演出の日澤雄介と俳優の岡本篤が、近藤のワークショップに参加したのをきっかけに、「起て、飢えたる者よ」に演技アドバイザーとして参加。その後、かねて抱いていた、第1次世界大戦中に独・仏によって分断された西アフリカの悲喜劇を描いたジャン=ジャック・アノー監督の映画「ブラック・アンド・ホワイト・イン・カラー」(1976)をベースにした構想を話したところ、同劇団の脚本家・古川健も国境が題材のストーリーを考えておりコラボレーションが決まった。

日本がポツダム宣言を受諾しなかったため南北に分断され、その国境の両側で暮らす隣人同士が否応なしに戦争を意識させられていく物語。作・演出は日澤と古川に一任し、役者に徹している近藤は、岡本や浅井伸治、西尾友樹ら劇団の若手、気心の知れた戸田恵子高田聖子らと熱を帯びた稽古を重ねてきた。

「お芝居っていうのは、本当に稽古中は手応えがない。幕が開かないとね」と言うが、今年は同作が実に5本目の舞台と意欲的。独り芝居やミュージカルにも挑み、舞台の魅力を再認識した様子だ。

「これだけ稽古をすると、スタッフも含め密度が濃くなる。ドラマでは(視聴率が)15~20%いけば、街を歩いていたら声をかけていただいたりするけれど、反響が意外と分かりづらい。お芝居は人数は少ないけれど、反応が直に返ってくるのが面白い。あとは全身をさらけ出しているので、役者にとっては怖いけれど、やりがいがあるツールですよね」

さらに、今春には渡辺謙が主演するミュージカル「王様と私」を観劇するため米ニューヨークを訪れ、他のブロードウェーの舞台にも足を運び、自らの進む方向性が見えたという。

「ニューヨークで10年ほどやっている演出家と出会って言われたのは、相手とのコミュニケーション。多少演技は変わっても、お互いが決めずにちゃんと相手を見てやっていればそれが無限大になるんだと。日本は歌舞伎や能といった個人芸が多い文化だから、日本の演劇はきちんと間を決めたりする。ブロードウェーを直に見ていいなと思った人は、相手のセリフを聞いて反応するということが確実にできている。僕はもともとコミュニケーション下手で、役を通して相手とコミュニケーションをとることが楽しいというのが芝居の原点だったので、そこにあらためて気づけたんです。その意識を心の内奥に持ち続けていれば大丈夫だという答えがはっきり出て、いい腹のくくり方ができたと思います」

一方、映画初主演で初の濡れ場もこなし、初めての海外映画祭となるモントリオールにも赴いた「野良犬はダンスを踊る」が今月12日から地元の名古屋で公開された。来年1月9日からは大阪でも封切られる。

「いろいろなつながりが増えていくことが、すごく楽しいですね。名古屋では、同級生が何人か見に来るみたいなので、『一応、ベッドシーンがあるから気をつけて。安易に子供と見に来ると大変だよ』って話しておきました(笑)」

本人は意識していないというものの、来年は中学3年生でNHKドラマ「中学生日記」に出演してから節目の40年を迎える。さまざまな初体験を糧に、さらなる高みを目指そうとする近藤の言葉にはベテランならではの深みと味わいがあった。

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