「FOUJITA」夫婦役で初共演、オダギリジョーと中谷美紀が語る唯一無二の小栗映画の世界観
2015年11月15日 07:30

[映画.com ニュース] 小栗康平監督10年ぶりの最新作「FOUJITA」が公開中だ。オダギリジョーを主演に迎え、フランスと日本という二つの文化と時代を生きた画家、藤田嗣治を描いた。画家の晩年まで寄り添った5番目の妻、君代を演じたのは中谷美紀。夫婦役で初の本格共演を果たした、日本映画界を代表する俳優二人が、唯一無二の小栗映画の世界観を語った。(取材・文・写真/編集部)
小栗監督はカンヌ受賞作「死の棘」をはじめ、「泥の河」「伽揶子のために」「眠る男」など、その芸術性が国際的に高く評価されている。本作では、すべてのショットが計算しつくされ、映画と絵画が融合したような美しい映像が繰り広げられる。そんな小栗監督の作品に出演し、抱いた印象や感想をふたりはこう語る。
「淡々とした静寂の中にファンタジーが詰め込まれている、そんな印象を持っていました。実際にお会いし、監督の独特のアート的な視点やその哲学が刺激になり、こういう人がまさしく映画を撮るべき人だと思った」「観客にすくい取ってもらいたいものが、監督の作品では余白の中にこそ詰まっている。本当の表現というものを、誠意を持って追求されている方。そこに身を委ね、俳優としてゼロに戻り、余計な垢を落としてもらえるような経験でした」(オダギリ)
「芸術の追求がわかりやすさに優先されることが難しい現状で、小栗監督は孤軍奮闘されており、芸術至上主義がまだ許されるのだなという印象を持ちました。そんな中オダギリさんは、非常に楽に映画の中に立っていらして、フジタがそのまま画面の中に立っているようでした」「この映画で素晴らしいと思うのは、監督が観客の皆様の想像力を信じていること。説明しなくてもわかってくださるという暗黙の了解、日本人のインテリジェンスを信じている。そこに感銘を受けました」(中谷)
「小栗監督はこの映画を伝記ものにしたくない、映画だからこそできるフジタを作りたいとおっしゃっていた」と話すオダギリ。小栗監督からフジタについて事前になるべく勉強しないで欲しいとリクエストを受けたそう。おかっぱ頭に丸メガネという個性的ないでたちで、軍靴の足音に翻弄され様々な矛盾を抱えながらも芸術家としての人生を貫いた藤田嗣治を飄々(ひょうひょう)と演じた。
「乱暴な言い方をすると、ぼくはフジタを理解しようと思わなかったし、フジタになろうとも思っていなかったんです。彼がどんな人で、どういうエピソードを残して、どう思われているかということはなるべく意識せず、小栗監督が書いた『画家』を演じただけ。結局のところ、フジタがどういう人間かつかんでもいないし、あの複雑な人物像をつかめるはずもないと思っていました。あの時代にパリで奮闘していた1人の画家が自分だったら、そういう感覚で演じていました」
中谷は本作に携わるにあたり、フランスや国内など画家が過ごした場所を訪ね歩いた。「面相筆を使っていたことなど、単なる西洋かぶれではなく、日本人だったからこそもたらされた発想があり、ずっと根無し草のように帰る場所を持たなかったフジタの、でもどこか故郷と繋がっていたいという思いが感じられた」と述懐する。
フランスでフジタが受け入れられた理由は何だったのだろうかと問うと、「フランスの方って、歴史を重んじる一方で新し物好きなので、東洋から来たおかしなおかっぱの男が、ぼろきれをまとって描く絵というのが、見たことのないものだったのでしょうね。彼の乳白色の追求は、日本人、東洋人だからこそ西洋人の白い肌が際立って見えて、その心象風景をどう表現するかということを、西洋人の感覚からはありえないくらい追求したのでは。そういったところにフランス人は興味をもったのかもしれませんね」と、フランス文化や芸術を愛する中谷らしい考察を述べ、オダギリや記者をうならせた。
テレビドラマを観ているような、わかりやすい映画ばかりが昨今の邦画界を席巻する現状を危惧しているというオダギリ。その対極にあるといえる本作について、こうまとめた。「フジタという画家の生涯を教えて欲しいと思う人が見に行ったところで、求めていた答えをくれる映画ではないかもしれません。答えはくれませんが、様々な想像をさせてくれる映画です。一人の人間のいろんな面を想像して、初めてその人物が立体化していくと思うので、この映画を見てフジタという人物像をとらえに行くよりは、その世界の中で、豊かな時間を過ごすということに近いような気がします。僕自身、いろいろな事を感じたり考えたり、ぞくぞくするような感覚を味わい、本当に見てよかったと思う作品です。文化的な豊かさや大切なものを見失いかけ、時間やお金ばかりが優位に立っている今の社会とは全く違うものを目指している映画だと感じて頂けると思います」
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