「FOUJITA」小栗康平監督、希代の日本人画家演じたオダギリジョーを絶賛
2015年10月26日 17:55
[映画.com ニュース] オダギリジョー主演の日仏合作映画「FOUJITA」が10月26日、第28回東京国際映画祭コンペティション部門で公式上映され、オダギリ、共演の中谷美紀、小栗康平監督、プロデューサーのクローディー・オサールが会見した。
小栗監督は、「埋もれ木」以来約10年ぶりにメガホンをとった本作で、希代の日本人画家・藤田嗣治に挑んだが「伝記的な映画として撮っておりません。1920年代のパリと40年代の日本を並べ、文化・歴史の違いを浮かび上がらせる作りになっています」と説明。そして「今年70歳になります。35歳でデビューしましたので、約半分かかって藤田にたどりついたという印象です。戦争の世紀を生きたが故に多くの矛盾を抱えた、そういう人物を『泥の河』でデビューした自分が戦後70年の機に撮ることができた喜び」と思いを明かした。
「とてもいい藤田になってくれた」と小栗監督お墨付きの演技を見せたオダギリは、「小栗監督が10年ぶりに映画を作られるということで、声をかけていただいて光栄に思いました」と吐露。「正直、藤田のことはあまり知らなかったですし、今もそれほど藤田に興味があるわけではないですが(笑)、小栗監督の作品にかかわりたいという思いで参加しました」と会場の笑いを誘いながらも、「今までの自分の映画の中のオダギリジョーという役者の幅をいくつも超えて存在できていて、監督のおかげですごくいい俳優になれたなと思っています」と手応えを明かした。
オダギリは、フランス語にも挑戦しており「フランス語の先生がCDに声を吹き込んでくれたものを丸暗記し、現地の俳優の方に何パターンか芝居をしてもらったものを録音して、感情を持ったフランス語に仕上げていきました」。ふたつの時代の藤田の役作りは「簡単に言うと監督に丸投げ」と笑いながらも、「今までいろいろな役を演じてきましたが、小栗監督は言っていることがわかるようでわからない。わかるけれど、真実すぎて現実にするのは度胸がいることを自然に話されるので、探ったり自分の我を出すより、監督の手のひらで転がっていく方が、僕にとっても作品にとってもいいと思いました」と振り返った。
小栗監督は「芝居のハウツーを申し上げたことはなく、考え方を話し合います。丸暗記・丸投げ、これはマイナスではないんです。俳優さんが預けるということはとても勇気がいること」と持論を展開。「僕も一緒にフランス語を勉強したのですが、いつまでたっても覚えられない。それに対して、オダギリくんは音として全体をつかんでいる。これはオダギリくんのすべての芝居に言うことができます。感覚的にいられるか。こういうことができる役者って少ないんです。オダギリくんは、自分の体全体で芝居をつかむという難しいことをやっている俳優のひとり」と称賛すると、オダギリは嬉しそうに笑顔をこぼしていた。
中谷は、「映画史上で忘れがたい功績を残された監督が久々に映画を撮られるということで、喜んで参加させていただきました。オダギリジョーさんは藤田の生き写しのような佇まいで主軸としていてくださり、私は最後の妻としてそこにいさせていただき幸せでした」と感激しきり。そして、「フランスの現場をのぞかせていただいた時、現地のスタッフの方々が『オグリオグリ』と小栗教の信者のように監督を慕っていて、オダギリさんも『ジョーのフランス語が素晴らしい』と口々にほめていたことが日本人として誇らしかったです」と話した。
第28回東京国際映画祭は、31日まで開催。「FOUJITA」は、11月14日から全国で公開。