園子温監督「ひそひそ星」に込めた思いを告白「いろんなものをそぎ落としたかった」
2015年9月19日 09:00
[映画.com ニュース] 園子温監督が設立したシオンプロダクションの第1弾作品「ひそひそ星」が9月15日(現地時間)、カナダで開催中の第40回トロント国際映画祭でワールドプレミア上映され、メガホンをとった園監督、主演を務めた神楽坂恵が舞台挨拶に出席した。
園監督が妻である神楽坂を主演に迎え、なじみのスタッフとともに作り上げた独立プロダクション作品。度重なる戦争や災害などによって人間の数が極端に減り、宇宙に散り散りになって暮らすようになった未来世界を舞台に、年をとらないロボットが遠く離れた星から星へと、人間たちの“記憶”を配達していく姿を描いた。
本作は、園監督が25年前に生み出した脚本と絵コンテをもとに製作。構想を得た当時の様子を「自分が常に抱いている孤独に関する、人間の孤独に関することがテーマでした」と説明し、「普段の映画では描かない、蛇口をひねるだったり、お茶を飲むという日常の詳細、常に我々が繰り返している動作をSF映画で強調するということに重点を置きました。普通のSF映画だと、すぐに敵が現れて、宇宙船は戦うのが常ですが、どんなものにも日常があり、宇宙にいながらも、地球にいるのと変わらない日常があるということを描きたかった」と振り返った。
また、東日本大震災の影響が残る福島県の富岡町、南相馬、浪江町でロケを敢行し、住民たちの協力のもと、記憶と時間にまつわる物語をモノクロ映像でつむいだ。会場の観客から「モノクロという選択肢を選ばれたのはなぜですか?」と質問が飛ぶと、園監督は「いろんなものをそぎ落としたかった」と回答。セリフ回しも極端に声を落とした特異なものであるだけに、「いらない音はどんどん削った。台本の段階でもセリフをどんどん削りました。いらないものはできるだけそぎ落とした結果、モノクロになりました」と込めた思いを告白した。
最後に、園監督は「これは記憶に関する映画です。人間というものは、他愛もないものに思い出を持つもので、空き缶や、写真や。ロボットにはわからないけれど、少しずつ何かに思い入れがあって、それがこの映画のテーマでもあります」とアピール。神楽坂も、「トロントの人たちはとっても温かくて、ひそひそ星をここでプレミアできて本当に嬉しいです」と喜びを明かした。
「ひそひそ星」は、2016年に公開予定。