生誕110年、名優・志村喬さん初の回顧展開幕 黒澤監督からの直筆メッセージも
2015年8月18日 18:20

[映画.com ニュース]「七人の侍」、「生きる」など黒澤明監督作品を支えた名優・志村喬さんの生涯をたどる展覧会「生誕110年 映画俳優 志村喬」が8月18日、東京・京橋の国立近代美術館フィルムセンターで開幕した。
1934年に新興キネマ入りしてから、生涯で400本以上の映画に出演した志村さん。日活を経て43年に移籍した東宝で黒澤監督と出会い、デビュー作の「姿三四郎」をはじめ30本中実に21本に出演し、三船敏郎さんとともに黒澤映画の顔となった。
展覧会は、政子夫人(故人)を通じて同センターに寄贈されたコレクション約3700点の中からえりすぐった貴重な資料を展示。時代を追って幼少の頃の写真から代表的な出演作のスチル、撮影時のスナップ、黒澤作品の台本など、その生涯を詳細にたどる構成になっている。
特に、「醉いどれ天使」(1948)に主演が決まった際、黒澤監督が原稿用紙にしたためた直筆のメッセージも公開。「第一に、ズカリと役になる工風が肝要だと思ふ。(中略)役になってズカズカっと出て、そのまゝ何もせずにラスト・シーンまで持って行く位の腹でやって下さい。」(原文のまま)と、志村さんの器用さを見抜いた的確なアドバイスが送られている。
その「醉いどれ天使」の後、東宝争議によって映画製作がストップした際、闘争資金を得るために黒澤監督が演出した同作の舞台版の脚本も展示。その横浜国際劇場公演のパンフレットでは、一緒に上演したチェーホフの「結婚の申込み」も黒澤監督が演出していたことも明らかになっている。
同センターの岡田秀則主任研究員によれば、女優は過去に高峰秀子さん、田中絹代さん、香川京子を取り上げているが、男優をフォーカスするのは同センター初。「生涯に沿う形で、仕事の時の志村さんと仕事を離れた時の志村さんの両方が分かる構成になっている。志村さんの人生を語るのによくできたものになっている」と話した。
「生誕110年 映画俳優 志村喬」は12月23日まで。その間、9月26日~11月15日に代表作15本の上映も随時行われる。
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