【総括】現地取材で初めて分かった、Netflixの「本当のすごさ」
2015年8月8日 12:00

[映画.com ニュース] ビバリーヒルズのNetflixオフィスで取材を重ねていると、彼らの持つ「強み」が全社で深く共有されていることが分かってくる。取材相手が変わっても、自分たちの長所について皆同じことを語るからだ。取材を終えて我々は、「Netflixの競合サービスに対する優位性」はおもに5点に集約されるという結論に達した。これは、我々が東京を出発する前につかんでいた「3つの強み」より2つ多かったことになる。
5つのうち、最初の2つはコンテンツに関するものだ。まず、「Netflixでしか見られないオリジナルのコンテンツ」が豊富にあること。そして、コンテンツを制作する「クリエイターに大いなる自由」を与えていること。Netflixは、デビッド・フィンチャーの「ハウス・オブ・カード 野望の階段」を皮切りに、マーベルの「デアデビル」、ウォシャウスキー姉弟の「センス8」など、先鋭のクリエイターにNetflixでしか見られないシリーズを制作させ、大成功を収めている。しかも彼らにとっては、視聴回数やランキングなどの指標は重要ではない。いかに、他と違うものが作れるかの方が大事なのだ。
残りの3つは、テクノロジー分野における優位性である。まずは彼らの「4Kへのこだわり」だ。これは並大抵ではない。Netflixのオリジナルシリーズは、撮影自体を4Kで行っているという。4Kで撮ると、自然光の中で収録できる情報量がとても多くなるのだそうだ。彼らは、日本で制作するオリジナルアニメも4Kで作ると宣言している。
次は「長年培ったストリーミング技術」だ。彼らは2007年にストリーミング配信を開始しており、すでに8年の実績がある。

クリス・ジャッフィ(バイスプレジデント・ユーザーインターフェイス・イノベーション)によれば、彼らはPC、スマートフォン、タブレット、ゲーム機など900におよぶ端末に向けてユーザーインターフェイスを制作しているという。1500人のエンジニアがいて、どんな端末でも、見たい番組に2クリックでたどり着けるように改善を重ねているそうだ。
また、再生ボタンをクリックしたら、すぐに番組が始まるようにエンコーディングすることにも腐心している。例えば、4Kの場合はデータ容量が大きいので、通常なら再生が始まるまでのバッファリングの時間が気になってしまう。ところが彼らは、オープニングの部分は多少軽めだが貧相に見えない程度のデータを送信してバッファリングを最小限にとどめ、バックグラウンドで徐々に4Kへ移行するというエンコード技術を開発しているのだ。
最後に、彼らの誇る「優れたレコメンデーションエンジン」についても改めて触れておかなくてはならないだろう。Netflixで視聴可能なすべての番組を7万6897の種類に分け、6500万人のユーザーの視聴履歴をキメ細かく分類し、そのユーザーにオススメの番組を推薦している。結果、Netflixの全視聴のうちの75%が、このレコメンデーション経由であるという。まさに驚異的だ。先のクリス・ジャッフィによれば、これは「レコメンデーション」というよりは、「パーソナライゼーション」だという。インターフェイスは面積が限られているので、ユーザーにとって、何が一番適切なタイトルであるか見せられるよう最適化を行っているそうだ。

ところでこのレコメンデーションだが、オススメが当たりすぎるがゆえに、一部の若者たちが困ったことになっているという。
問題は、恋人同士で同アカウントをシェアしていた場合に起こる。つまり、カップルで同じプロファイルを使っていた場合、2人が別れた後も彼女(彼)がそのアカウントにログインしてNetflixを視聴し続けるケースが多く、なかなか縁が切れないんだとか。
せっかく育てた視聴履歴が、恋人と別れたことでリセットされてしまうのは確かに辛い。レコメンデーションもイチからやり直しになることを考えると、別れた彼(彼女)のアカウントをずるずる使い続けてしまう気持ちも、まあ分からないではない。これからサービスインする日本の皆さんにおいては、アカウント作成の際に参考にしていただきたい。
それはさておき、今回の取材で、Netflixは満を持して日本市場へ乗り込んでくるのだということがはっきりした。彼らには、日本で失敗するイメージは恐らくない。むしろ、Netflix上陸によって、日本のVODマーケットが一気に活性化することを想定していた方がよさそうだ。
Netflixは、9月2日からサービス開始である。(取材・文:編集部 駒井尚文)
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