大林宣彦監督、リアルに戦争描く「あの日の声を探して」に深く共感 愛川欽也さんとの思い出も語る
2015年4月19日 18:50
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[映画.com ニュース] 仏・グルジア合作映画「あの日の声を探して」試写会イベントが4月19日都内であり、大林宣彦監督がティーチインを行った。また、イベント後には大林監督の「私の心はパパのもの」(1992)に出演した愛川欽也さんとの思い出も語った。
アカデミー賞5冠に輝いた「アーティスト」のミシェル・アザナビシウス監督の最新作である「あの日の声を探して」は、1946年のアカデミー賞4部門ノミネート作「山河遥かなり」から着想を得た作品で、ロシアに侵攻されたチェチェンで両親を殺され、姉と生き別れ、声を失った9歳の少年が、難民キャンプで懸命に生きる姿を描く感動作。アザナビシウス監督が手持ちカメラで撮影を行い、演技経験のない少年が主人公を熱演するなど徹底したリアリティを追求した。
本作に深い感銘を受けたという大林監督は「年をとっていることも大事で、僕のちょっと上の高畑勲監督、そのちょっと上の山田洋次監督と仲がいいのだけれど、戦争を体験している我々3人がそろって伝えなければいけないと思っている。だから、この映画にも人ごとならぬ関心があった」と語る。
そして、「山河遥かなり」のフレッド・ジンネマン監督のユダヤ人の両親がホロコーストで殺害された過去を持つこと、また本作のアザナビシウス監督もユダヤ系のルーツであることを説明し、「チェチェンの紛争をバックグランドにしながら、(いかなる戦争でも)戦争が人間を殺人鬼にしていくことを描いてる」と作品に込められたテーマを解説。素人の少年を主役に起用し、また、約1万人の群衆をCGを使わずに現地のエキストラで撮影したことに「そこで生きている人の生活を捉えようとしているのが演出として成功している」と称えた。
ドキュメンタリーではなく、劇映画で反戦を伝えることについては「後の世代が同じ過ちを繰り返さない為に、ハラハラドキドキする映画を見る喜びを感じながら、“嘘から出たまこと”として、体験していない人が学ぶことができる」ことがフィクションの力だと説く。大林監督自身の作風にも触れ「僕の映画はファンタジックな恋愛映画だと思われるけれど、原子爆弾が8個出ています。アメリカでは反戦映画だと気づかれますが、日本人は平和難民になって気づかない。映画から作家のフィロソフィーを読み取れなくなっている」と警鐘を鳴らした。
大林監督は今年1月放送の「出没!アド街ック天国」の収録に参加し、愛川さんと握手を交わしたのが最後だったそう。愛川さんは長年憲法改正に反対を唱えてきたことも知られているが、「3つ年上で、(同じ戦後を知っている世代として)切実な思いがあったと思う」と語り、「僕たち世代は正義を語りません。欽也さんは何が正しい生き方かと正気であろうと努めた人。そういう仲間を失ったことが残念」と偲んだ。
「あの日の声を探して」は4月24日から、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。
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