第65回ベルリン映画祭、金熊賞はイランのパナヒ監督 瀬戸桃子監督がアウディ短編映画賞
2015年2月15日 14:25
[映画.com ニュース]第65回ベルリン国際映画祭が、2月14日(現地時間)に授賞式を迎え、金熊賞に、イランのジャファル・パナヒ監督の「Taxi(原題)」が選ばれた。日本から参加したSABU監督の「天の茶助」は、残念ながら賞を逃した。一方、短編のコンペティションに参加したフランス在住の瀬戸桃子のアニメーション「プラネットΣ(シグマ)(原題)」が、映画祭公式スポンサーのアウディによる、アウディ短編映画賞を受賞した。
パナヒ監督は2010年に反政府運動を支持したとして、イラン政府による国内軟禁状態が続いており、授賞式では映画にも出演した、幼い姪が登壇。感無量の様子で涙ぐむ、感動的な瞬間となった。「Taxi(原題)」は、監督自身が運転するタクシーにカメラを据え置き、乗車する人々とのさまざまな会話を通してイラン文化を浮き彫りにする。審査員長のダーレン・アロノフスキーは、「パナヒは怒り苦しみに溺れるのではなく、それを映画作りに向け、愛情をもって彼のコミュニティや国、観客に向けた作品を作った」と称賛した。
審査員グランプリには、牧師のコミュニティを舞台に、カトリック教会を批判する大胆で挑発的な、パブロ・ララインの「The Club」が輝いた。男優賞と女優賞は、評価の高かった作品「45 Years」で、長年連れ添った夫婦に扮し名演をみせたトム・コートネイとシャーロット・ランプリングがそれぞれ下馬評通りに受賞。また、チリを舞台にしたコンペティション唯一のドキュメンタリーである、パブリシオ・グスマンの「The Pearl Button」は、脚本賞に輝いた。
「素晴らしい作品が多く、賞を増やさざるを得なかった」と語る審査員長の言葉を反映し、今年は監督賞と芸術貢献賞がそれぞれニ作品ずつ選ばれた。監督賞は、モノクロのユーモラスなコスチューム劇のなかに現代社会に通じるメッセージをこめた、ルーマニアのラドゥ・ジュ―ドによる「Aferim!」と、さまざまなジャンルをミックスし個性的な作品に仕立てたポーランドのマルゴジャータ・シューモースカの「Body」が分け合った。芸術貢献賞は、全編を1カットで撮った「Victoria」と、雪と霧の美しい映像が印象的な「Under Electric Clouds」が、ともに撮影賞を送られた。アロノフスキーは、すべての賞が審査員メンバー全員の同意に拠ることを強調。結果的に今年も社会的、政治的なバックグラウンドをもった作品が、受賞に有利に働いた印象だ。(佐藤久理子)