「水の声を聞く」主演・玄里が語る ベルリンで夢見る“文化が政治の壁を越える瞬間”
2015年1月23日 05:00

[映画.com ニュース]山本政志監督作「水の声を聞く」が、第65回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式出品が決定した。同作での演技が評価され、第29回高崎映画祭で最優秀新進女優賞を受賞した主演女優・玄里が、映画.comに現在の心境を語った。
高崎映画祭での個人賞受賞について、「生まれて初めての賞かもしれないです。この女優が出ているなら見たい、そう言われるまで頑張ります」と喜びをかみ締める玄里。ベルリン出品には様々な思いが去来しているようで、「もちろん私も嬉しいのですが、そのニュースを聞いて周りの人が喜んでくれるのがとても嬉しくて。特に山本監督や村岡(伸一郎)プロデューサーの電話口での喜びようは、受話器の向こうで踊っているんじゃないかってくらいで。そして正直、ほっとしています」と胸のうちを明かす。
「出会うべくして出会う作品だったし、役だったから、自分の信じたものは間違っていなかったんだなって、少し背中を押してもらった気分です」と話す玄里が今作で演じたのは、新宿のコリアンタウンでひと稼ぎしようと巫女(みこ)を始めた在日韓国人のミンジョン。軽い気持ちで始めたものの、いつしか宗教団体「真教・神の水」の教祖となり、後戻りできない状況に陥る。救済を求める信者たちに苦悩するミンジョンだったが、次第に偽物だった宗教にも心が宿り、不安定な現代社会を救おうと大いなる祈りを捧げるようになる。
現地入りする予定の玄里は、「作品の中で私は日本語と韓国語を両方しゃべっているのですが、どちらの言語もわからない観客には伝わるのかな、気づくのかなあっていうシンプルな事が気になっています」と笑う。作品についても、「この映画が言われがちなのが在日の人の話だとか、宗教の話だとかなのですが、どこの国の人とか何を信じているとかは根本的に関係なくて、ひとりの女性が自分は何者なのか、どこから来たのか、それを知りたいと人生をかけて挑戦する話だと思っているんです」と説明。だからこそ「私自身、まだ28年しか生きていないですが、文化が政治の壁を越える瞬間を何度も見ました。人と人がお互いに興味を持って心でつながれる瞬間。映画の街で、またそれが起こればいいなと思っています」と思いを馳せている。
幸先の良い1年のスタートを切ったといえるが、「三大映画祭に行くことがひとつの目標だったから、夢がひとつかないました。だからきっと忘れられない年になるだろうし、まだまだここからとも思います」と謙虚な姿勢を忘れない。さらに、「私は人の思考を変えたいとは思いません。でも泣いたり笑ったり、人の心を動かす作品に出合いたいし、そういう時間を作りたいし、そういう芝居がしたいです」と語る。
仕事をしたい監督も、やってみたいジャンルの作品もあふれ出るほどの思いを抱えている。「北野武監督の『アウトレイジ』に続編があれば出演してみたいですし、正反対なんですが、とかく家族ものに弱いので、家族をつづった話もやりたいです。それから、女性監督とお仕事をするのが今年の目標。よく使われる『女性ならではの』視点みたいなものに期待しているわけではなく、どちらかというと好奇心ですね。違っても、違わなくてもいいんです。そこには何があるんだろう、と。やっぱり私は新しいフィールドに挑戦することが好きみたいです」。
玄里の挑戦は、まだまだ続く。「今月末、ご縁があって篠原演芸場で2日間だけ、大衆演劇に出るので、ぜひ見に来てください。いま稽古中なんですが、毎日が新しいです。台本がないんですよ。3歳とか4歳の時から舞台に立っている人たちなので、体で覚えているんです。尊敬するばかりです」。大衆演劇で得た経験を映画の現場で生かす日は、そう遠くないはずだ。
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