報道写真家・林典子氏、「おやすみなさいを言いたくて」の女性ならではの葛とうに共感
2014年12月13日 17:20
[映画.com ニュース] ジュリエット・ビノシュが報道写真家を熱演した映画「おやすみなさいを言いたくて」が12月13日、東京・角川シネマ有楽町ほか全国で封切られ、報道写真家の林典子氏が公開記念トークイベントを行った。
林氏は、中央アジアのキルギスに伝わる衝撃の慣習に密着した写真集「キルギスの誘拐結婚」で注目を浴び、フランス世界報道写真祭ビザ・プール・リマ―ジュ報道写真特集部門「visa d'Or」金賞を日本人で初受賞した気鋭のフォトジャーナリスト。これまでにも報道写真家を描いた映画を見てきたそうだが、「現場での仕事ぶりを描いた作品は多いけれど、ここまで家庭と仕事に揺れる心の葛とうを描いたものは初めて見た。主人公が夫と交わす会話の一言一言もリアルで新鮮な作品だった」と感銘を受けていた。
世界中の紛争地域を飛びまわる戦争報道写真家のレベッカ(ビノシュ)が、自分の身を案じる夫や娘たち家族への思いと、仕事への情熱の間で揺れ動く姿を描き出した本作。林氏は、「紛争地域の取材先からスカイプで言うのではなく、直接『おやすみなさい』を言いたい気持ち。彼女のことを自己中心的と思う人もいるかもしれないけれど、家族も仕事も大事でどうバランスをとっていいかわからない気持ちは、私の心にも突き刺さってきた」といい、「女性だから撮影できる被写体もある。自分の仕事に対する責任、自分にしかできない取材への思いは強い」と深く共感していた。
林氏はもともとジャーナリスト志望ではなかったそうで、大学に入るまではカメラも触ったことがなかったという。「大学で国際紛争学や平和構築を勉強して、アフリカで一番小さな国ガンビアにボランティアで行った時、『ここに残ってこの国をもっと知りたい』という思いから現地の新聞社に入った。言葉はその言葉がわかる人にしか通じないけれど、写真なら子どもでも感じるものがある。文章にはない力があると思った」と報道写真家への道を進んだ。
女性の社会進出に関する制度や問題点が議論される昨今、「私の周りのジャーナリストたちも、仕事が成功していても家庭生活が難しく離婚する人も多い。私もいつかは直面する問題かもしれない。報道写真家の物語だけど、自分の状況に置き換えて考えてみても面白いかもしれない」と語りかけた。
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