人食い魔女VS強盗描いた鬼才イグレシア監督作に隠された裏の意味とは?
2014年11月21日 16:00

[映画.com ニュース]悪魔退治のため悪に手を染める司祭、常軌を逸した道化師、頭に鉄柵が刺さった男――スペインの異才アレックス・デ・ラ・イグレシアの世界では、奇想天外なキャラクターがうごめく。近作では、妻で女優のカロリーナ・バングがイグレシアワールドのミューズとしてスパイスを効かせ、新作「スガラムルディの魔女」もラテン美女の熱で染めている。イグレシア&バング夫妻がつくる愛すべき奇妙な世界に迫る。
ペドロ・アルモドバルに見いだされ、アルモドバルのプロデュース作「ハイルミュタンテ! 電撃XX作戦」で長編デビューを飾ったイグレシア監督。その後も、「ビースト 獣の日」「気狂いピエロの決闘」など独創的な作品を展開し続けている。
イグレシア監督は、強烈な風刺や独特のブラックユーモアなど、笑いを織り交ぜながらスペイン社会や人間関係の裏側に潜むものを浮き彫りにし、スクリーンに映し出してきた。「いつもコメディをつくっているわけではないけれど、結果的にあまり出来が良くないと思う作品はユーモアが足りないんだよね。自分のものであれ、人のものであれユーモアがない映画は成功していないと思うよ。オデュッセイアのような悲劇でも必ずユーモアがあるし、反対も言えると思うんだ。実はコミカルだと思っているものも、見方を変えると非常にドラマティックな要素や深刻な問題がある。ドラマティックな状況とコミカルな状況は、突き詰めていけば同じ点から出ているんだよ」(イグレシア監督)
そんなイグレシア監督が、今回選らんだテーマは「人食い魔女」だ。主人公ホセ(ウーゴ・シルバ)ら苦境に立たされたダメ男たちが、魔女の一族、元妻(マカレナ・ゴメス)らに追い詰められていく。イグレシア監督が「ある意味フェミニズムの映画」と話すように、男を食い尽くそうとする女の強さが描かれている。しかし、ホセらに救いの手を差し伸べるセクシー魔女エバには、「裏の筋」が隠されている。
「マドリードは男社会なんだ。男は金を奪って今の社会をつくってきたけれど、決して満足しているわけではなく、自分自身を見失ってしまっているのが現状で、そこから逃げようとしたホセたちがたどりついたのが、女性がいる夜の世界(スガラムルディの村)なんだ。拷問されたり大変な目に遭うけれど、そんな世界を経て見出した解決策は、魔女のリーダーが望んでいた男社会に代わる女社会ではなく、エバと主人公のように男と女が愛し合う世界。お互いに協力していくことにこそ、解決策があるということが隠れた筋立てなんだよ」(イグレシア監督)

本作では、主人公を導くエバを妖艶に演じたバングは、これまでにもイグレシア作品で重要な人物を担ってきた。「最初に脚本を読んだ時、撮影中、完成した作品を見た後の役のイメージが全然違うの」と役者としても未知のイグレシアワールドの魅力を語り、「どこに自分を連れて行ってくれるのかわからないから、私たちは任せるしかないわ。どこにでも連れていってくださいと信頼する姿勢がないと、彼の独特の世界には入っていけないと思う」。そして「仕事のときのアレックスは、非常に活動的でダイナミックね。仕事中は良く怒鳴られるから、家に帰ったら私が怒鳴っているの(笑)」といたずらっぽく笑う。
最後にイグレシア監督は、構想中だという新作コメディについて明かしてくれた。「(2015年)1月に開始予定なんだけど、タイトルは『ミ・グラン・ノチェ』(『私の偉大なる夜』の意)で、ある大晦日に放映されるテレビ番組のパロディなんだよ。大晦日に自分たちの社会について語る番組なんだけど、制作スタッフから拍手のタイミングや満足している様子を見せるように指示があるんだよね。私は、見せかけの幸せは嘘であり、たとえ自分にとって良いものでなくても真実が求められるということを描きたいんだ」。毒と笑いを持って社会に切り込むイグレシア監督の世界から目が離せない。
「スガラムルディの魔女」は、11月22日から全国で公開。
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