浅野忠信主演のフィリピン映画 鬼才ケビン監督とC・ドイル「映画はコンセプトではない」と語る
2014年10月24日 20:45
[映画.com ニュース] 東京・六本木ヒルズで開催中の第27回東京国際映画祭で、コンペティション部門出品作「壊れた心」の公式会見が10月24日あり、ケビン・デ・ラ・クルス監督、撮影監督のクリストファー・ドイル、女優のエレナ・カザン、俳優のアンドレ・プエルトラノとビム・ナデラ、プロデューサーのステファン・ホールが出席した。
浅野忠信が主演する本作は、フィリピンのスラム街を舞台に、殺し屋と娼婦の逃避行を描いたラブストーリー。セリフをほとんど排除し、ケビン監督による音楽とドイルの映像美で疾走感あふれる詩的な世界を映し出す。
ケビン監督は映像作家として活躍するほか、詩人、小説家、音楽家としても活動するマルチアーティスト。ゴッドファザー役を演じたナデラは「彼は偉大なフィルムメーカーで、クレイジーなことをたくさんしていますが、フィリピンでデジタルムービーの父と呼ばれています。私は、今回の作品はグローバリゼーションを擬人化したもので、フィリピン映画史上初めての出来事だと思っています」と鬼才の経歴を紹介する。
エモーショナルな音楽と、鮮やかな色使いのこだわりについて問われたケビン監督は「私はとりわけカラフルな色彩が好きで、クリストファー(・ドイル)がマニラの色合いを使い込み、昼なのに夜のようなトワイライトなイメージを出した」と説明。劇中で流れるメインテーマはケビン監督が作曲し「もともとはフィリピンのラブソング。音楽はこの作品にとって大事な声の役割を果たしている」とケビンとともに音楽を担当したプロデューサーのホールが語った。
本作はたった4日間で、ほぼ即興で撮影された。ウォン・カーウァイ作品をはじめ、そのスタイリッシュな映像で世界的に高い評価を受けているドイルが「私にとってすべてはロケーションと人々。コンセプトではないのです。映画学校で教わることを信じないでください。映画は前もって作れるものではなく、同じ意図を持った人たちが集ったときに生まれるもの」と自身の哲学を語ると、ケビン監督も「コンセプトはあらかじめいくつも用意できますが、すべては撮影のときに起こるのです」と同調。そして、ドイルが「たかが映画ですが、そのたかが映画が私たちの人生なのです」と締めくくり、アーティストらしい矜持を見せた。
東京国際映画祭は10月31日まで開催。