「悪童日記」ヤーノシュ・サース監督「原作の簡潔さをいかに映画的に表現するか」
2014年10月2日 18:00

[映画.com ニュース]ハンガリー出身の亡命作家アゴタ・クリストフの同名ベストセラーを映画化した「悪童日記」が10月3日公開する。メガホンをとったのはヤーノシュ・サース監督。戦時下をたくましく生きる双子の、ときに残酷な生き様をシンプルかつ美しい映像で表現し、見事カルロビ・バリ国際映画祭でグランプリを受賞した。このほど来日したサース監督に、映画化までの道のりを聞いた。
「冷酷であり、生々しくもあり、暴力的で同時に美しさがあった」と原作から受けた印象を語る。小説と映画はメディアが違うということをふまえた上で、映像に落とし込む際に留意した点を挙げる。「原作は簡潔であり、その冷たさの下には熱があります。美しさだけではなく、荒々しさや悲劇という非常に複雑な表現が必要だと思いました。簡潔さをいかに映画的に表現するかを考え、シンプルな映像であることを心がけて映画的な技巧を抑制しました。自然な流れで起きることを撮ったのです」
映画化権を手に入れるまで15年もの月日がかかった。世界的ベストセラーで、映像化不可能と言われた原作を映画化するにあたってのプレッシャーはなかったのだろうか。「もちろんハンガリーでもベストセラーでしたが、そういう意味でのプレッシャーはなく、あったとすると自分が自分にかけていたプレッシャーです。私は安全パイをとるタイプではなく、リスクを自らとって行くタイプ。原作も、映画作りにも秘密がたくさんあり、すべてをわかった上でやるべきではないと思うのです。物語の中で母親が双子を祖母に預ける時に言い残した『学び続けなさい、生き続けなさい』というメッセージが鍵となりました」
(C)2013 INTUIT PICTURES - HUNNIA FILMSTUDIO - AMOUR FOU VIENN主役はハンガリー中の学校をリサーチして見つけた双子の兄弟だ。感受性豊かで美しいふたりは、原作さながらに複雑な家庭環境で育ったそう。「結果的にはその存在感でした。ふたりは演技経験ゼロで、ブダペストから離れた貧しい村に住んでおり、詩のひとつも読んだことがなかった。私は演技経験がないというその純潔さを大切にしたかったのです」と起用の決め手を語る。
実際の撮影に入ってからは「戦争という背景を彼らに説明する必要はありませんでした。彼らの人生に彼ら自身の戦いが存在していたからです。私が監督としてできることは、彼らに演技の必要のない場所を作ること、そして、小説の持つ簡潔さに沿って映画を盛り上げることでした」と述懐。そして、「抑制した演技を求めたので、実は、なんでもできるベテラン俳優陣に少年たちに合わせたシンプルな演技をしてもらうことが一番苦労しました」と葛藤も明かした。
アゴタ・クリストフとは映画権取得をきっかけに対面し、友情を深めた。脚本執筆を依頼したが、小説と映画は違うという理由で断られたと明かす。女史は映画の完成を待たずしてこの世を去ったが、監督が手がけた脚本だけは読んでもらうことができ、その簡潔さに満足してくれたそう。「彼女がこの映画を気に入ってくれることを夢見ています。何か心に響く部分を見つけて、彼女の綴った物語に近いものになったと感じてくれたら。彼女はすごく正直で、思ったことをすぐ口にするので、『あそこは、ちょっと……』とか言われる部分もあったかもしれません。できることならば、鑑賞後にハグしてもらいたかったですね」
「悪童日記」は10月3日、TOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテほか全国公開。
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