キム・ギドク監督「性に対する欲は大きな宿題」と熱弁
2014年10月1日 13:10

[映画.com ニュース] 「嘆きのピエタ」で第69回ベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したキム・ギドク監督が、最新作「メビウス」のプロモーションで来日し、9月30日に東京・新宿シネマカリテで行われたティーチインに出席した。
全編を「笑う」「泣く」「叫ぶ」の3つの感情要素だけで構成し、肉欲に狂わされ、破滅に向かう家族の惨劇をセリフなしで真っ向から描き切った。浮気した父をチョ・ジェヒョンが、自身の性器を切り取られてしまった息子をソ・ヨンジュがそれぞれ演じ、息子に刃を向ける狂気の母をイ・ウヌが怪演している。
キム監督は「私にとって、性に対する欲というのは大きな宿題。『メビウス』を通して語ったように、人間は欲望から解き放たれるのかという問題は、私だけでなく皆さんにとっても同じ」と熱弁を振るい、観客に対し「その宿題を死ぬまで抱えていき、そしてずっと解決できない。そうした葛藤や悩みがあるからこそ人間なのだと思う」と指南した。本作の構想については「今まで多くの映画が人間の欲望を描いてきたが、具体的な性器を登場させて人間の欲望を語ってみたいと思った」と振り返る。さらに「性器とはすなわち家族である。家族とはすなわち欲望である」と結論付け、「性器と家族と欲望というのは、メビウスの輪のようにひと繋ぎになっている」とタイトルに込めた意味を説明した。
劇中には、息子が自身の身体に石をこすりつけ快感を得るシーンがあるが、キム監督は「昔軍隊にいた時の経験をエピソードとして映画の中に入れています。軍隊では軍靴をずっと履いているので、足がかゆくなる。あるときものすごくかゆかったので、目の粗いたわしを持って足をこすりました」と明かした。そして「この方法は、実際に性器を切り取られていない方には決してお勧めできない。とても信じられないくらい苦しい結果が待っている」と忠告し、「そのたった1回だけやったあとは1度もやっていません」と苦笑を浮かべていた。
「メビウス」は、12月6日から新宿シネマカリテほか全国で公開。
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