フランスの俊英フレッド・カバイエ、新作「友よ、さらばと言おう」でもこだわり貫く
2014年7月31日 14:20
[映画.com ニュース] ハリウッドリメイクされた「すべて彼女のために」や韓国でリメイクされた「この愛のために撃て」など、フィルムノワールと現代アクションを融合させた作品で高評価を得るフランスの俊英フレッド・カバイエ監督。6月にフランス映画祭で初来日を果たしたカバイエ監督に、最新作「友よ、さらばと言おう」について熱く語ってもらった。
優秀な刑事だったシモン(バンサン・ランドン)は、勤務中に起こしてしまった人身事故をきっかけに、出所後も家族と向き合わず、警備会社で働く無気力な日々を送っていた。かつてシモンとコンビを組んでいたフランク(ジル・ルルーシュ)は、そんな元相棒を見ていられず何かと世話を焼くが、シモンは一向に変わらない。そんなある日、シモンの息子がマフィアの裏取引を目撃してしまい、2人は命を狙われたシモンの息子を守るため、再びコンビとなって凶悪組織に立ち向かっていく。
たとえ同じ題材・脚本でも、監督によって映画のトーンやテイストは大きく異なるもの。カバイエ監督は、これまでの“愛する者のために全てを投げ打つ男”というモチーフを根幹としながら、本作では男の友情や絆にもフォーカスを当てている。「このストーリーを描くにあたり2つの方法があったと思う。復讐劇を描くこと、もしくは友情にフォーカスを当てて贖(しょく)罪を描くこと。僕は後者を選んだ。自分のせいで家族がバラバラになってしまった男の贖罪。その方がヒューマンな物語に厚みが出ると思ったんだ」と、“つぐない”を意味する原題「Mea culpa」に込めた思いを語った。
「すべて彼女のために」のランドン、「この愛のために撃て」のルルーシュと、過去2作で組んだ2人との再タッグについては、「映画とは本来、セリフを“言葉”で表現するのではなく“映像”で表現するものだと思う。役者が顔の表情、視線、言葉以外で心情を表現することが重要なんだ。僕がどのように感情を描きたいか、2人とも深く理解しそれをスクリーンで立証してくれる優れた俳優。3本目でも彼らと組むのは至極当然に思えたんだ」と絶大な信頼を寄せる。
とはいえ、可能な限りスタントを排除したアクション描写でも他を圧倒する。「スタントを使うとどうしても人物の背中を写すことが多くなるけれど、本人だと近く真っ正面からも撮れる。カメラが役者と一緒に走ることで映像に臨場感も出る。観客には自分が主人公になったような気分で、ビデオゲームで遊んでいるような感覚になってほしいんだ。 決してお金がないからスタントを使わなかったわけではないんだけどね(笑)」。
本作もドウェイン・ジョンソン主演ですでにハリウッドリメイクが決定しているそうだが、なぜここまでカバイエ監督の映画はリメイクされ続けるのだろう。
「アメリカのアクションはドラマが弱いよね。エモーションがきちんと描かれていない。僕は基本的にはアクションよりもドラマの部分を重視しているんだ。観客は“走る”という行為そのものではなく、“なぜ走る”のか、その理由に対して共感するもの。だからキャラクターの“動機づけ”を明確にすることを意識している。リメイク側はそこに面白みを見出しているんじゃないかな」と自ら分析。また、「『どうせリメイクするならオリジナルの本人が撮ればいい』って色々なオファーももらうんだけど、僕はきちんと自分で脚本を書いて撮りたいタイプなので、ハリウッドでは制約が多過ぎてまだ実現してないんだ。でも次回作はハリウッドでアメリカの俳優を使って撮る予定で、大切な人や家族を守るために奔走する女性が主人公の物語になると思うよ」。
カバイエ監督のハリウッド進出への期待も高まる中、「東京をひと目見てとても映画的な都市だと思ったよ。街も建築物も、空港から都内に走る道も、『ここでアクション映画を撮りたい!』という気持ちにさせてくれた。その時はバンサン・ランドンも連れてくるよ!」と日本進出もそう遠い話ではないかもしれない。
「友よ、さらばと言おう」は8月1日より公開。
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