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中田秀夫監督×藤原竜也「MONSTERZ」で構築した共犯関係

2014年6月1日 07:15

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中田秀夫監督と藤原竜也
中田秀夫監督と藤原竜也

[映画.com ニュース] 自ら選んでいるわけではない。“悪そうな”顔立ちをしているわけでもない。だが藤原竜也の元には“非道徳”“反社会”といったキーワードで語られる役柄のオファーが次々と届く。時代の要請なのか、高い演技力ゆえの必然なのか。「理由は僕に聞かないで」と藤原は苦笑する。「MONSTERZ」で演じた「」という役柄も、そんな“アウトローの系譜”に加わることになりそうだ。ただ中田秀夫監督はこの役について「決して単純な“悪役”ではない」と強調。そして静かな笑みを浮かべこう付け加える。「たった一人で世界を背負って戦うのがこんなに似合う俳優さんも他にいないでしょう?」。(取材・文・写真/黒豆直樹)

視界に映る全ての人間を意のままに操る能力を持ったと、その能力をもってしても唯一操ることができない。2人の運命が交錯し、生き残りをかけた戦いが繰り広げられる。「デスノート」で死神のノートを武器に世界の神に君臨しようとした月(ライト)、「藁の楯」で10億円の賞金をかけられた残虐な殺人者・清丸、そして本作。藤原は社会的な枠を飛び越え、ルールの外で生きるを見事に体現し、見る者を惹きつける。

「ひとつひとつ違う作品ですし、それぞれ監督にいただいた役柄であり、演じる上で決まった(役への)アプローチがあるわけでもないですよ。ただ俳優として、演じていて楽しいですね。今回の目で人を操るという力も、難しい部分もありましたけど、気持ちよかったです(笑)。このが孤独や罪、過去を背負い、唯一、空間を止めて静かな世界に浸っているときだけ、安らぎと落ち着きを感じるというところもすごく好きでした」

この「」は能力を使い、他人の金を奪って生活する犯罪者であることは事実だが、一方でその能力で途方もないことをしようともしない。むしろ、自身の存在すら誰にも気づかれないようにひっそりと暮らしている。だからこそ、能力で操れない“例外”と遭遇したとき、静ひつな世界を壊す存在として嫌悪し、執ようなまでに彼を抹殺しようとする。中田監督は言う。

「『死ぬまで生きる。それが俺の人生だ』というセリフがあって、それは当たり前のことで、フランスで上映した際は同じセリフを山田くんが言ったときに笑いが起きたんですが、藤原くんの方は徹底したニヒリストとして言う。でも“悪”という言葉ではくくれない。子どもの頃から化け物扱いされ、『何のために俺は生まれてきたんだ?』と自分の宿命を内面的には狂おしく叫んでいる。自己破滅したいけど、それさえもできずに矛盾を抱え、世界を憎みながら生きている。現実世界にそういう疎外感を感じている人はいるだろうし、映画はそういう人物を描くものだと思う」

藤原演じるの能力が唯一効かない田中終一役のピースとして加わったのは、山田孝之。藤原と同年代の実力派だが、意外にも2人の共演は初めて。藤原は、役を通じて対峙した山田の印象をこう語る。

「ものすごくストイックで、本番への感情の持っていき方はすごかったですね。いろんな役をやって、いろんな監督に愛される理由がよく分かりました。このタイミング、ガッチリと組むことができるこの作品で出合えてよかったなと思います」。さらに中田監督は、ここまで述べてきた「このという存在を単なる悪として捉えることはできない」もうひとつの理由として、山田が演じた終一の存在、2人の関係性を挙げる。

「最初から僕の頭の中にあったのはロバート・デ・ニーロアル・パチーノが共演したマイケル・マン監督の『ヒート』。デ・ニーロは誰も殺さない知的な強盗犯なんだけど、新参者の仲間が殺しをしてしまい、そこから運命が変わっていく。パチーノは彼を追う刑事で敏腕だけど、家庭をないがしろにしてやさぐれている。どっちが善でどっちが悪かというのを超えたの色気や魅力があって、それを竜也くんと山田くんで描けたらと思っていた」

ちなみに藤原と中田監督は撮影中、現実から逃避するかのように「次は何も起こらない静かな作品を撮ろう」(中田監督)と語り合っていたとか。「竜也くんが朝起きて、朝ご飯を食べて、会社行って、帰ってきて、お風呂に入って――今回もシャワーシーンは出てくるけど、ここはしっかりと見せ場にして(笑)――あとは寝るだけという映画を撮りたいですね」(中田監督)。「喜んでやります。でも監督の作品だと結局、湯船につかっているとだんだん水面が波立ってきて、排水溝に黒い髪の毛が絡まって……ってなるんでしょ(笑)」(藤原)

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