マンデラ氏の2度の結婚やテロ行為もありのまま描く自伝映画、完成への「長い道」
2014年5月21日 13:05
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[映画.com ニュース] 昨年12月に死去した元南アフリカ大統領ネルソン・マンデラ氏の自伝を映画化した「マンデラ 自由への長い道」が日本に上陸する。青年時代に反アパルトヘイト運動に身を投じ、27年間もの獄中生活を経て、大統領に就任したマンデラ氏の人生を描く同作。日本ではノーベル平和賞も受賞した聖人という印象が強いが、映画は自伝に基づき、2度の結婚や若き日の武装闘争とテロ行為といった、ありのままの人間・マンデラ氏にスポットを当てている。
「マンデラ氏自身、自分が神格化されたり、美化されることを嫌っていた。この映画を作るにあたっては、彼の欠点や犯した過ちもしっかり描きたかった。それが本人の強い希望だったからね」と語るのは、来日した本作のプロデューサー、アナント・シンだ。1956年、南アフリカに生まれ、インド系3世という理由で“非白人”に分類されたシンは、反アパルトヘイト運動に参加し、南アフリカ初の反アパルトヘイト映画を製作した経歴を持つ。
「以前からマンデラ氏の生涯を映画にしたいと思っていた。同時に、マンデラ氏も私が作った映画を知っていてくれて、自伝が出版される前から、映画化に向けて意気投合していた」という。シンがマンデラ氏本人と対面したのは、マンデラ氏の釈放からわずか2週間後。以前から交流があった人権活動家の計らいで実現したといい、「それが90年だから、映画の完成までは文字通り“長い道”だったわけなんだ」と振り返る。
膨大なボリュームの原作を約2時間の映画にまとめるために、シナリオの改稿は「70回以上行った」。また「マンデラ氏の生涯を、南アフリカで生まれ育った人間が、南アフリカの映画として成立させるため」資金調達にも奔走。ハリウッドの大手メジャーからの干渉を避ける目的もあった。
そんな本作で最も重点が置かれたのが、マンデラ氏と2人目の妻ウィニーとの「親密で私的、そして悲劇的なラブストーリー」だ。マンデラ氏とウィニーは58年に結婚。その6年後にマンデラ氏は収監され、ウィニーもまた人種差別撤廃運動に身を投じ、1年以上投獄された。
「ラブストーリーを中心に据えたのは、もちろん意図的で、長い投獄生活を強いられるマンデラ氏の姿と、対照的に外の世界で激動の人生を生きるウィニーを通して、南アフリカが歩んだ歴史的背景や世界の動きをドラマチックに見せたかった」とシンは言う。ちなみにマンデラ氏は96年にウィニーと離婚し、98年に3回目の結婚をしている。
本作の全米公開から約1週間経った13年12月5日、マンデラ氏はヨハネスブルクの自宅で95年間の生涯に幕を閉じた。残念ながら、マンデラ氏が完成した映画を鑑賞するチャンスはなかったが、シンは「きっと作品の出来に満足してくれたはず」と胸を張る。人気ロックバンド“U2”が手がけた主題歌「オーディナリー・ラヴ」は第86回アカデミー賞の主題歌賞にノミネートされ、授賞式ではU2が披露したシンプルで骨太なパフォーマンスが大きな感動を呼び起こした。“ありきたりな愛情”をたたえる同曲同様、「マンデラ 自由への長い道」は人種も世代も超えた、普遍的なメッセージが込められている。
「マンデラ 自由への長い道」は、5月24日から全国で公開。
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