オスカーノミネートの名脇役ジョナ・ヒルの素顔
2014年2月7日 15:40

[映画.com ニュース] 俳優のジョナ・ヒルが、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」で、主演のレオナルド・ディカプリオに負けない存在感を放っている。「マネー・ボール」に続き、本作でもアカデミー賞助演男優賞へのノミネートを果たした男――すなわち、主演スターにとっていま最も頼りになる名脇役といえる。プロモーションで来日したヒルに、その素顔に迫った。(取材・文・写真/黒豆直樹)
巧みな弁舌と詐欺まがいのセールスで、ウォール街で成り上がった男の栄光と破滅の実話を描いた本作。ヒルはディカプリオ演じる主人公ジョーダンの片腕として、ビジネスからドラッグまで、文字通り公私にわたりハチャメチャを共にするドニーに扮した。
ヒルが本作への出演で受け取った報酬が米映画俳優組合の規定最少額6万ドルだったと報じられたが、報酬の多寡にかかわらず出演を熱望した理由、それはマーティン・スコセッシ監督の存在だった。「スコセッシの作品に出られる。それだけで十分だったよ。同時に脚本も本当に素晴らしかった。ドニーのような人物に共感は出来る部分は全くなかったけど(笑)、人間の心の闇が描かれているところに強くひかれたんだ」。

劇中のほとんどの時間、酒に酔うかドラッグでトリップし、ハイテンションのドニーだが、ヒルにとって忘れられないのが、珍しくしらふでジョーダンと向き合い、寿司を食べる終盤のシーン。「築いてきた全てが崩壊しつつあることを頭の中で自覚しているけど、盗聴器の存在のせいで何も言うことができず、全く関係ない会話をするんだ。心の中の思いを口に出せないないということを言葉以外で、寿司を食べながら表現しなきゃいけなくて、すごく難しかったね」。
ホテルの取材ルームのソファに大きな体を縮めるように座り、恥ずかしげにポツリポツリと語る目の前の男が、スクリーンの中で額に青筋を立てて下半身を露出する男と同一人物とは信じられない。「それが仕事だから(笑)」と答えると、また照れくさそうに目をそらす。「撮影になると、なりきっちゃう感じかな。素晴らしい体験だけど、エネルギーの消耗もすさまじいよ。特にこの役は『こいつ、何やっているんだ!』という思いで心が痛んだから、なおさら疲れたよ(苦笑)」。
次々とオファーが届くことについて、「同業者に認めてもらえるっていうのは何より光栄なこと。だから余計、もっといろんな役に挑戦しようと励みにしているよ」と語る。そんな謙虚で心優しいオスカー候補に、「アカデミー賞はほしい?」と聞いてみた。「そうだね、もちろん受賞したいけど、でも、とったとしても僕の気持ちも、俳優としてのやり方も変わるわけではないと思う。ただ光栄という思いだよ」。
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