木村大作監督「春を背負って」万感のクランクアップ 松山ケンイチ「最高の現場」
2013年10月28日 16:39

[映画.com ニュース]日本を代表する名キャメラマン・木村大作の監督第2作「春を背負って」が10月28日、東京・成城の東宝スタジオでクランクアップを迎えた。立山連峰などでの大規模なロケを含む撮影を終えた木村監督は、「今日で全部終わっちゃう。明日からどうしたらいいんだ。撮影していないと早くいっちゃう。なるべく早く次回作をと思っています」と充実した面持ちで振り返った。
初監督作「劔岳 点の記」を“最初で最後の監督業”と位置づけて撮りあげた木村監督は、興行収入25億8000万円の大ヒットに導いた。監督引退を撤回し、主演に松山ケンイチ、ヒロインに蒼井優を迎えて臨んだ「春を背負って」が、約7カ月間に及ぶ撮影を完遂した。同スタジオでは松山と蒼井、豊川悦司、檀ふみ、新井浩文が木村監督とともに“最後の瞬間”を共にした。
木村監督と初タッグとなった松山は、「やっぱり木村監督は最高でした。いい勉強をさせてもらいました。過酷な撮影でしたが、皆さんに支えられて乗り切ることができた。自分でも手ごたえを感じている」とニッコリ。ベテラン豊川も、「木村大作監督以下、本当にチームワークが素晴らしかった。久しぶりに本物の映画の魂、本物の映画の現場に触れることができました」とうなった。
撮影中に過酷だったことについては、松山が「山小屋から人を担いで降りるシーンがあって、雪道がきつかった。また、崖を降りるシーンには本当に叫んでしまった。見た瞬間、『いや、無理でしょう』と思った」と吐露。蒼井は、「初回の登山もきつかったですが、雪に埋もれている山小屋での暮らしだったので、カビの影響もあって喘息になってしまった」と明かし、標高3015メートルの大汝山での往復10時間という道程を振り返った。
この日は、黒澤明監督作のスクリプターとして知られる野上照代氏が陣中見舞いに訪れた。木村監督は、「自分がこういう穏やかで叙情的な映画を撮れるとは思わなかったね」と本音を明かし、スケジュール通りに製作が進行していることについて「優等生じゃない」とほめられるなど、終始にこやかに談笑していた。撮影中も基本的に笑顔が絶えることがなかったという木村監督は、「ふだんは大体しかめっつらなんだけど、今回は毎日ニコニコして楽しく撮影できた」と納得顔。それでも、「来年6月の公開に向けて多くの人に見ていただかないと、俺の人生が終わる。俺だって74歳だもの。とにかく、この映画をやってよかった。次に備えたいね」と“大作節”健在をアピールした。
笹本稜平氏の同名小説が原作で、菫(すみれ)小屋を舞台に、家族とそこに集う人々の力強い生き方と温かな交流に焦点を当てた人間ドラマ。立山連峰で育った長嶺亨(松山)は、山小屋の主として生きる父・勇夫(小林)に反発し、一度は故郷を捨てて東京で暮らすことを選ぶ。しかし、父の通夜のために戻った立山で、気丈に振舞う母・菫(檀)、涙を必死に堪え山小屋で働く高澤愛(蒼井)、沈痛な面持ちで見守る山の仲間たちと触れ合ううち、疑問を感じていた今の生活を捨てて山小屋を継ぐことを決意する。
なお同作には小林薫、吉田栄作、池松壮亮、安藤サクラ、仲村トオル、市毛良枝、井川比佐志、石橋蓮司が出演している。
「春を背負って」は、2014年6月14日に全国で公開。
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