アイスランド映画「馬々と人間たち」監督、奇想天外な展開で「クリシェを攻撃」
2013年10月23日 13:20

[映画.com ニュース] 東京・六本木ヒルズで開催中の第26回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「馬々と人間たち」の記者会見が10月22日に開催され、ベネディクト・エルリングソン監督、プロデューサーのフリズリク・ソール・フリズリクソンが出席した。
アイスランドの荒涼な大地を舞台に、馬と人間の生と死、果てしない欲望や絶望を奇想天外なエピソードを交錯させて描く。エルリングソン監督は、「フリズリクが大きな岩のようにずっとそばで支えてくれていたから実現した企画」と感謝を述べると、フリズリクも「ベネディクトは大嵐の中の繊細な藁(わら)みたいな感じだからね」と冗談を飛ばし、2人は「大きな岩と繊細な藁。まるで俳句みたいだね!」と仲睦まじく笑い合っていた。
エルリングソン監督いわく、アイスランドでは人と馬の関わり合いがとても深く「アイスランドのローカルなプレミアでは、出演した馬も劇場に入場したよ。乗馬は庶民的なスポーツで、アイスランドの人が馬に乗ることはごく普通のこと。だからこそ役者と馬が良い関係を築けることが重要だったけれど、どの役者もみんな馬に乗るのが上手で、馬にうまく乗れる役者はみんな良い役者だった」とキャスティングにも恵まれた。
たくましく生きる女性たちが印象的に描かれているが、「この映画のヒーローは女性たちなんだ。ストーリーを引っ張るメインキャラクターは女性だし、アイスランドでは女性が生活を支える大きな力。実は馬社会のヒエラルキーでも、牝馬(ひんば)がグループをコントロールしている。それに私はフェミニストだしね(笑)」と女性観を語った。また、奇抜なシーンの連続で「観客を驚かせたかったんだ。人は予想外の展開が起きると目が覚めて、次は何が起こるのだろうと心を開く。クリシェを攻撃しているんだ。ハリウッド映画のルールは全て破っているかもしれないけどね」と独自のポリシーを語った。
そして、「今アイスランドの映画業界に台風が訪れている。新しい政府になって映画の予算が40%カットされ、僕ら映画人は震えている。これまでは年に5~7本は製作されていたけれど、これからはもっと減っていくと思う。一方で数多くのハリウッド映画のロケ地にもなっていて、僕は彼らの予算のだいたい1%の製作費でこの映画を撮った。地元の農家の方々が無償で馬を貸してくれるなどとても協力的だったので、そういった社会資本があってこそ実現した映画」とアイスランドの映画事情を語った。
第26回東京国際映画祭は、10月25日まで開催。
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