出生時に取り違えられたイスラエルとパレスチナの青年描く「もうひとりの息子」監督に聞く
2013年10月18日 09:00
[映画.com ニュース] 昨年の第25回東京国際映画祭で最高賞の東京サクラグランプリと最優秀監督賞の2冠に輝いたフランス映画「もうひとりの息子」が、10月19日に公開を迎える。出生時に取り違えられてしまったイスラエルとパレスチナの青年2人とその家族の葛とうを通じ、アイデンティティの模索や家族のあり方を問いかける力作。再来日を果たしたロレーヌ・レビ監督に、本作への思いを語ってもらった。
ユダヤ系フランス人のレビ監督にとって、本作の題材と自身のアイデンティティを切り離すことはできない。「父方の祖父母はナチス・ドイツにアウシュビッツ強制収容所で殺害されてしまったし、父親は青年の頃からレジスタンス活動に身を投じていた。こういった家族に生まれると自ずと自分のアイデンティティに興味をもったし、ユダヤの迫害の歴史から自分のルーツを考えることは自然なことでした」。そして、「私が常に関心を持っているテーマとは、アイデンティティの探求と家族の物語。最初は原案だけで脚本はなかったけれど、イスラエルを舞台に自分のテーマを追求できると思ったんです」と製作の動機を語った。
イスラエルのテルアビブに暮らすフランス系イスラエル人家族と、パレスチナのヨルダン川西部地区に暮らすパレスチナ人家族。文字通り“壁”で分断された2つの家族の溝は大きい。そんな状況下で、愛する息子が実の息子ではなかったと知った時の、母親と父親の反応の違いも興味深い。レビ監督いわく、それは男女間の差ではないという。「母親は生命体として命を生み出す役割を持っているからかもしれないけれど、命を本能的に受け入れることができる。男性は権力にとらわれていたり、父親から受け継いだものを息子に伝えないといけないといった、色々なしがらみでがんじがらめになっているのかも。母性に対してのオマージュを捧げている側面もあります」。
“ユダヤ人”と“アラブ人”とはいわゆる人種の違いではなく、言語、文化、宗教などによるものであり、見た目からその判別は難しい。それゆえに、多感な年頃の青年たちは自らのアイデンティティに思い悩む。「18歳とはようやく自分のアイデンティティを構築できたかなという微妙な時期。そんな時に自分のアイデンティティが粉々に打ち崩されるというのは、ドラマ的にインパクトがあると思いました。イスラエルで育ったミュージシャン志望のヨセフは家族にちょっと甘やかされたところもあり、顔にあどけなさが残っている。一方のヤシンは、医者になるために家族から離れてパリで暮らす自立した青年。2人の少年の違いは、役者のルックスでうまく特徴づけました」とキャスティングの狙いを明かした。
レビ監督は、イスラエル人とパレスチナ人の混成チームを編成し、民族間の根深い対立を普遍的な家族のドラマに昇華させた。「撮影の4カ月前から現地に入り、たくさんのイスラエル人やパレスチナ人と会って色々な話を聞きました。彼らの過去や実際の暮らし、すべてをノートに留めていくと2つの民族についてリアリティが浮かび上がってきて、それらが映画のストーリーをとても豊かなものにしてくれました。撮影中も恒常的に意見を取り入れながら、シナリオを進化させていくという作り方でしたね」と柔軟に対応した。
最後に、レビ監督はこう強調した。「希望の映画を作りたかったんです。見た人を幸せにする映画を作りたい。悲劇的な中にも笑いや微笑みの瞬間を込めることをいつも心がけています。映画館を出る時に観客が心に太陽をもって出られること、それが私の願い。これからもそうやって映画を作っていきます」。
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