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映画ファンを熱狂させたポルトガル映画「熱波」監督が語る

2013年7月12日 20:00

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ミゲル・ゴメス監督
ミゲル・ゴメス監督

[映画.com ニュース] 昨年ヨーロッパ各国で公開され、映画ファンを熱狂させたミゲル・ゴメスの新作「熱波」は、静けさに満ちたモノクロの映像に、なんともノスタルジックなせつなさが漂う映画だ。映画は2部構成で、「楽園の喪失」と題された第1部では、現代のポルトガルを舞台に、善意に満ちた孤独な女性とその隣人の老女の触れ合いが描かれる。第2部「楽園」では、その老女の過去——アフリカの植民地における秘められた熱い恋の物語が、音楽とモノローグだけで語られ、見終わった後、深い余韻を残す。ゴメス監督は現在41歳。実際目の前にする彼は年齢よりは若々しく、どこか飄々とユーモアにあふれている。そんな彼のどこからこれほど円熟した映画が生まれたのか、その奥義に迫るべくインタビューを試みた。(取材・文/佐藤久理子)

——現代と過去を2部に分け、過去のパートをセリフのない無声映画にした構成が独特ですが、なぜ過去だけを無声にしたのですか。

「第2部を音楽と自然の音だけにしたのは、ある意味今はもう存在しない亡霊の物語のような印象を与えたかったから。かつて植民地で起こった出来事を、老女は最後まで決して人に語ろうとしなかった。それは彼女にとってタブーだった。だから無声にすることで、その物語がとても昔に起きたような印象を与えたかったんだ」

——この映画の原題は「TABU」ですが、F・W・ムルナウの無声映画にも「TABOU」という作品がありますね。
画像2(C)O SOM E A FÚRIA, KOMPLIZEN FILM, GULLANE, SHELLAC SUD 2012

「じつは僕はムルナウの大ファンだ。この映画の第2部は、今や消失し忘れられたものを語るわけだけど、僕にとってそれは現代における無声映画を意味した。そしておそらくムルナウは、無声映画時代のもっとも素晴らしい時期を代表していた。日本でもオズ(小津安二郎)やミゾグチ(溝口健二)が素晴らしい無声映画を作っていて、たとえば「雨月物語」は僕の大好きな作品だけど、僕はムルナウのロマンティシズムに惹かれる。今の映画にはあまりみられない、幻想的な作品が好きなんだ」

——モノクロの映像にしたのも、モノクロ・フィルムがいまや忘れられつつある存在だからでしょうか。

「その通り。それにモノクロは映画の創成期を彷彿させる。モノクロ映画はあまり人気がないし、フィルム自体もカラーより高いけれど、僕にとってはぜひモノクロにする必要があった」

——ところでポルトガルの偉大な監督といえば、マノエル・デ・オリベイラ、ホアン・セザール・モンテイロ、ペドロ・コスタなどがいますが、あなたにとって彼らはどんな存在ですか。

「僕にとってこの3人はとても重要だ。もちろん、ポルトガルの映画史のなかでも重要な存在だけど。彼らはみんなパーソナルな作品を作り続けている。というのもポルトガルでは映画産業がとても小さくて、プロデューサーは映画で儲けることを期待していないから、監督は低予算で好きな映画を作る。彼らの作品に共通する要素があるとしたらそれは、みんな恐ろしく個性的なこと。その秘密は、ポルトガルの映画産業がとても貧乏だからなんだ(笑)」

熱波」は、7月13日シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

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