河瀬直美監督、若手映像作家にエール「世界の扉を開いてほしい」
2013年5月30日 20:00
[映画.com ニュース] 俳優の別所哲也が立ち上げ、今年で15周年を迎えた米アカデミー賞公認の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2013」(SSFF&ASIA)のオープニングイベントが5月30日、東京・表参道ヒルズで行なわれ、現地時間26日に閉幕したカンヌ映画祭から帰国したばかりの河瀬直美監督が、ショートフィルムを通じて映像業界に特別な貢献をした作品・人物に贈られる特別賞を受賞した。
川瀬監督は、「短い時間の中にキラキラしたものを凝縮して詰め込む。何を残して何を捨てるのか、難しいジャンルだからこそ作家性が出てくる」とショートフィルムの醍醐味を熱弁。カンヌ映画祭ではコンペティション部門の審査員を務め、「審査委員長のスティーブン・スピルバーグは本当に真面目な方で、ひとりひとりの意見をちゃんと聞いて集約してくれる。パルムドールをとった作品(「Blue Is The Warmest Color」)は審査員満場一致だった」と明かした。そして、「“カンヌの申し子”と言われるのはありがたいことだけど、あの赤いカーペットはあきらめずに一歩一歩進んでいった先の世界。遠く離れた非現実の世界じゃない。日本人としても届く可能性はあるので、世界の扉を開いてほしい」と未来の映画監督たちにエールをおくった。
ショートフィルム文化の普及に貢献した作品・人物に贈られる「話題賞」は、11年度の受賞者・石井竜也がプレゼンターを務め、短編「3G」を初監督した俳優の中尾明慶に贈られた。学生に協力をあおいで撮影したという中尾は、「趣味でやった作品がこんな立派な賞につながった。スタッフさんの大変さを改めて感じ、俳優としても感謝している」と感慨深げだった。
ミュージックShort部門の優秀賞・シネマチックアワードは、写真家の蜷川実花が安野モヨコの原作を倖田來未主演で映像化したUULA制作のミュージックビデオ「ピンク スパイダー inspired by バッファロー5人娘」が受賞した。倖田は、「自分の楽曲でドラマが仕上がっていくのは本当に光栄だった。復帰したばかりの撮影で、1年以上ぶりにハイヒールを履いて挑んだ久々のアクション。蜷川さんのカラフルな世界観、3人の女性の力強さがひとつになった作品」と大喜び。蜷川監督は、「女性が見て頑張ろうと思えるものを作りたかった。キャストも豪華でスタッフも素晴らしく、とても濃い内容になっている」と自信をのぞかせた。
歌手の西城秀樹をはじめ、広島県観光大使の有吉弘行らが出演する「おしい! 広島県 THE MOVIE」が観光映像大賞を、みうらじゅん&安斎肇によるユニット「勝手に観光協会」が「観光映像特別大賞」を受賞。みうらは、「“全県を推していこう”と勝手にやっていたことなので、ふさわしい賞をいただいたと思う。勝手にポスターやご当地ソングを作っているのでいつか捕まるかも」とおどけていた。
世界中の映画祭をサポートするシャンパンブランド「モエ・エ・シャンドン」が未来のスターにおくる「モエ スターアワード」には、短編「LOOT 泥棒」を手がけた南アフリカ出身のグレッグ・ロム監督が輝き、「初めての受賞なのでうれしい。トロフィーの中身がシャンパンだったらいいですね」と喜びを語った。同映画祭は、6月16日まで東京・横浜エリアで開催。“ショート・フィルムの日”である6月4日は、全プログラム無料となる。