塚地武雅&山田優、富山・魚津映画「げんげ」でさらなる飛躍誓う
2013年3月30日 11:15
[映画.com ニュース] お笑いコンビ「ドランクドラゴン」の塚地武雅が主演を務める「げんげ」が、第5回沖縄国際映画祭のコンペティションLaugh部門で上映された。久々に共演を果たした塚地とヒロインの山田優に、富山・魚津を舞台にした本作の魅力を聞いた。
塚地演じる冴えない食品会社の営業マン・田中は、社員旅行で訪れた箱根の九頭龍神社で9つの願いごとをする。すると不思議なことに次々と願いがかなっていき、「夢がかないますように」という漠然とした願いごとは、学生時代の夢だった映画監督という形で現実のものとなる。
この物語は、本作が初メガホンの角田陽一郎監督の実体験から生まれたという。塚地は、「監督が本当に九頭龍神社に行って、『映画を撮りたい』という願いをしたらしく、その日のうちか次の日くらいにオファーの連絡が来たらしい。僕が監督役で失敗することも、角田監督がその場で体験したこと。そういうリアルな失敗がちりばめられてるし、隣にモデルがいるので演じやすかった」。実際に現場で起こるハプニングからインスパイアされたといい、「監督が見切れて映っちゃったり、カットかけるのを忘れたり。基本は真横にいる監督を見ていれば、アタフタしている感じがつかめた(笑)」とリアリティのある描写につながった。
塚地と山田は、西原理恵子氏の自伝エッセイをテレビドラマ化した「崖っぷちのエリー~この世でいちばん大事な「カネ」の話~」で夫婦役を演じた。しかし、山田は「相変わらず人見知り。ドラマで3カ月一緒で完全に仲良くなったつもりだったのに、この現場でまた『初めまして』みたいな感じで『えっ? なんだこれ?』って」と明かすと、塚地は「果たして俺のこと覚えているかなって不安で」と恥ずかしげに弁明した。
山田扮する魚津支社の事務員・弥生は、「すごく前向き。私が演じる役っていつも怖い役だったり変な役が多いので、普通の事務員の役はうれしかった」と“平凡”を満喫。一方、感情が高ぶるシーンでは勝ち気な魚津弁も披露しており、「本当に難しかった。言っている間に何を言っているのか分からなくなることもたくさん(笑)。とりあえず『あいうえお』を覚えるような感覚でセリフだけ頭に入れて、後からイントネーションをつける作業をしたけど、怒鳴っていると意味が分からなくなる」と大苦戦。しかし、塚地にとって「何言ってるのかさっぱり分からないけど、ただ怒っているのは分かって怖かった」と意思の疎通は万全。沖縄出身の山田は「やっぱり怒ると方言になったりする」そうで、塚地は「優ちゃんの振り幅に驚かされる。今回は一緒にやっていたドラマと全然違って、ちゃんと事務員の顔をしていた」と山田の“カメレオン”ぶりに感服していた。
田中は社長命令で富山の港町・魚津に派遣され、そこで地域の人々と協力しながら社長の自伝映画の撮影に挑む。ラストシーンには約900人の地元エキストラが駆けつけ、ミュージカルシーンを大いに盛り上げた。塚地は、魚津の人々の優しさに触れ「本当に温かい人たちだった。最後のシーンは魚津の人たちの協力なくして実現しなかった。雪が降っていたので、踊る人たちはめちゃめちゃ寒かったはず。こんなに協力してくれるんだって、その姿に感動してしまった」とリアルな感情がスクリーンいっぱいに映し出された。山田も、「皆さんすごく優しくて、あれだけの人数が集まってもすごくスムーズな現場だった。早く皆さんにも見てほしい」と感謝。もちろん、九頭龍神社での撮影では本作のヒット祈願も忘れなかった2人だが、塚地が「もっと売れたい」と願いごとをすると、山田も負けじと「私も『いっぱい売れたい!』って叫んでいた」と和気あいあいとした現場の空気が感じられた。
タイトルの「げんげ」とは、「幻魚」と書く深海魚のこと。かつて底引き網の副産物として浜に打ち捨てられ、グロテスクな顔つきも災いして「下の下」(げのげ)とまで呼ばれていた魚だが、今では料亭などで天ぷらや唐揚げとして食されている。幻魚同様に「下の下」とののしられるダメ男・田中を演じた塚地は、「見た目は悪いけどダシが出る。僕もそうなろうと思う」とさらなる飛躍を誓った。
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