原田眞人監督が若者に提示する“映画の明るい未来”
2013年3月16日 21:10

[映画.com ニュース] 第35回モントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門審査員特別グランプリに輝いた「わが母の記」の原田眞人監督の最新作は、スマートフォン向け総合エンタメアプリUULAが独占配信するバイオレンスアクションドラマ「RETURN」。椎名桔平を主演に迎え、ディレクターズカット版は長編映画として今夏の劇場公開も決定している。原田監督に話を聞いた。
暴力団幹部を殺害しアルゼンチンに逃亡していた男・北原(椎名)は、ある悪徳日本人実業家の暗殺を強いられ、危険を覚悟で10年ぶりに日本に帰国する。北原は、殺された兄弟への敵討ちに燃える凶暴な三姉妹“御殿川シスターズ”と闇組織の2つの勢力を相手に、三つ巴の死闘を繰り広げる。
原田監督の出世作といえば、世界中の若者を熱狂させた役所広司主演作「KAMIKAZE TAXI」だが、「もともと『KAMIKAZE TAXI』のテイストでオリジナル脚本をやりたいという思いがあって、その機会をずっと狙っていた。50歳を過ぎてから『わが母の記』のような作品も真剣に考えるようになったけど、年をとったからといって血はたぎっている」と気骨は変わらない。さらに本作では、ブラジルの格闘技カポエイラをベースとしたキレのある武闘アクションに挑んでおり、「カポエイラはもともと南米の囚人たちが手錠をされながら使える技として開発された足技で、現実のストリートファイトでも使えるもの。今回のアクションでは銃剣を使うつもりだったので、いくつかの技やポーズをイメージで組み合わせていって、それをコリオグラファー(振付師)につないでもらった。こういった作業は僕のこれまでの映画作りでなかったものなのですごく楽しかった」と新境地を開拓。新たなチャレンジを実現可能にしたのも、「48歳であれだけ動けるスターは少ない。演技的な意味でも桔平でなければできなかった役どころ」と4度目のタッグに厚い信頼を感じさせる。
もちろん、これまでの原田作品に通ずる“オーバラップするセリフ”も健在だ。「ジョン・カサベテスやケン・ローチを見れば分かることだけど、本来コンパートメントごとに仕切っているようなセリフは有り得ない。こういう芝居はアクションでやりやすいし、若い世代もうまい。結果、お互いが細胞を活性化するような芝居になったので、海外の映画祭でもウケる作品になっているんじゃないかな」と自信をのぞかせる。また、「『わが母の記』からスライドするにあたり、あの三姉妹を武闘派三姉妹として描きたかった。一番下にはどうしても土屋アンナがほしいなと、脚本段階でイメージしていた」と遊び心も忘れない。
劇場版には、配信版では実現しなかった福島第一原発事故への言及もある。「配信版に自主規制があるのは当然のこと。しかし劇場版は社会派エンタテインメントとして、東日本大震災以降の今を生きる日本人の話をやりたかった。ヤクザだって放射能は気にしているだろうと。黒澤明監督の『生きものの記録』を見直し、当時日本中が放射能パニックになったことを子ども心ながらに覚えていた。今は放射能に対して遠慮しちゃう動きがあるけど、アクション系統の映画でストレートに描いてみたかった」と野心は尽きない。
若者の映画離れに危機感を抱く原田監督だが、決して現状に絶望しているわけではない。「『わが母の記』にはやはり若い世代が来なかった。今の若い子たちは映画館で教育されていないし、オリジナルから何かを発見することに臆病になっている。映画会社もオリジナル作品に後ろ向きだし、僕にとってもオリジナルは『バウンス ko GALS』以来15年ぶり。自分にとって配信版はテレビドラマや原作モノと同じ感じで、そういうプロセスがアプローチとして増えてくるのでは。それでノレるやつがいたら『劇場来いよ!』って思っている」と呼びかける。また、「意表をつく面白さに若い世代はノッてくる。『おじさんの若い頃はなあ』ってことでなく、現在進行形で『これ面白いだろ、一緒に楽しもうよ!』という気持ちは強い。若者は歴史を正しく知りたいという渇望が強いし、もちろん笑ったり格好良いなって底流に、10年経っても20年経っても観賞に耐えるような表面的ではない仕掛けがたくさんある。そこは若い観客の柔軟性に委ねたい」と映画界の明るい未来を展望していた。
1話約14分で全8話構成の「RETURN」は毎週日曜日更新。視聴方法は、UULA公式WEBサイト(uula.jp)またはソフトバンク店頭で会員登録後、アプリをダウンロード。第1話は無料配信されている。
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