松田龍平、辞書編集者役で“言葉”に開眼「みんな用例採集しようよ」
2013年2月13日 22:15
[映画.com ニュース] 2012年本屋大賞第1位の三浦しをん氏の小説を映画化した「舟を編む」の公開を記念し2月13日、主演の松田龍平と石井裕也監督が、東京のアップルストア銀座主催の映画人をゲストに招くトークセッション「Meet the Filmmaker」に出席した。
松田演じる出版社営業部員・馬締(まじめ)光也が、新しい辞書「大渡海(だいとかい)」を編纂する辞書編集部に引き抜かれ、個性的な面々と辞書作りに没頭しながら、恋心を抱く林香具矢(宮崎あおい)に伝える“言葉”を見つけようとする姿を描く。
「まほろ駅前多田便利軒」に続き、三浦氏原作の映画に挑んだ松田は、「主人公はコミュニケーションが苦手なのに辞書を作る。辞書を作りながら彼自身も成長していくというのが面白いと思った」と興味津々。また、「馬締は真面目に一生懸命なやつだけど、その熱が言葉に出ない分、他からにじみ出るものがないとなって思っていた。オダギリジョーさん演じる同僚が馬締と対照的な人だから、そのやりとりも楽しい。そうやって色々な人と向き合っていくことで、言葉や辞書とも向き合っていった」と役柄をつかんでいた。さらに、「当たり前のようにしゃべっている言葉でも、人によって見る角度が違うって面白い。中年の辞書の編集者が合コンに行って若い人たちの言葉を集めてくるシーンがあるけれど、そういう経験を探しにいくって特殊なことでなく誰にでも必要なこと。みんな用例採集しようよ」と語りかけた。
「川の底からこんにちは」「ハラがコレなんで」などで注目を浴びた俊英・石井監督は、初の原作小説の映画化に挑み、「オリジナル脚本とそこまで変わりがなく、ネガティブな要素は一切なかった。自分が作り上げる世界観には限りがあるので、原作から面白さを取り入れられたっていうのはすごく楽しかった」と手応え。また、原作の印象は「押し付けがましくなく、良い距離感で描いているなと心に残った。何年かかるか分からない辞書作りという覚悟を決めて、人生に立ち向かっていく姿は自分にも重なるし、毎日コツコツ継続できる才能が僕にはないのであこがれや羨望もあった」と語った。
松田は石井監督との初タッグに、「石井さんはやりたいことやイメージがしっかりしているから、現場ではお互いのイメージする馬締をすり合わせていく作業。楽しくもあり大変でもあった。人ってやっぱり立体だし、その立体感みたいなものは石井さんのおかげで出た気がする。これまでこんなに監督と話すことはなかった」と全幅の信頼を寄せる。石井監督も、「プロデューサーから『2人で一発決めてこい!』って感じだったので、松田さんの意見もリスペクトしたし、2人で良い映画にしようという感じ。結論は映画に出ている気がする」と胸を張った。
「舟を編む」は、4月13日から公開。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。