「ひかりのおと」岡山発、トマト農家の監督が提示する新しい映画製作のかたち
2013年2月8日 15:40

[映画.com ニュース] 岡山県真庭市で、トマト栽培で生計を立てながら農閑期に初の長編作品「ひかりのおと」を製作した山崎樹一郎監督。岡山県内全51会場100スクリーンでのキャラバン巡回上映を経て、2月9日の劇場公開を前に話を聞いた。
若き酪農家の新しい出発とその家族の絆、土地特有の人間関係を描いた自主製作映画。東京国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭など国内外の映画祭に出品し絶賛された。物語は静かなトーンで進むが、家業の酪農を手伝うために東京から故郷に戻った主人公を軸に、多くのことを地方から都市へ力強く問いかける作品だ。
山崎監督のユニークな経歴にも注目が集まる。大阪出身で、学生時代から数年京都で過ごすが、06年に「食べるものをゼロから作ってみたい」と思い立ち、父親の実家のある真庭に移住してトマト栽培を始めた。07年に、映画館のない真庭で国内外の作品の上映や映画イベントを運営する団体「シネマニワ」を立ち上げる。それから数年後「農家としては半人前ですが、カルチャーショックも含めそこから経験したことを通して、地域の生活や風景が映画として作れるのではと思った」と、真庭で映画製作に着手したきっかけを語る。08年に初めて真庭を舞台にした中編「紅葉」を製作した。

「ひかりのおと」はフィクションであるが、自身の生活する地域を描くにあたり「嘘のないように」心がけたという。同地の酪農家に取材を行い、キャストも岡山出身者が中心だ。劇中では飼料高騰の影響や後継者問題なども描かれる。
完成後、岡山全域で行った巡回上映会では、次回作へのリクエストも寄せられ、地方で映画を製作することの手ごたえを感じることができた。「自分の知っているところが映っていると、会場がどっと沸いたりするんです。身近な人や場所を映画の中で発見するのが楽しみ方のひとつであれば、地域で作って、地域で見せる映画があってもいいんじゃないかと思った」と振り返る。
シネコンで上映されるハリウッド大作や国内大手配給作品とは、趣の変わった作品であることは違いない。巡回上映では「最後まで見てもらえれば、何かしら感じてもらえることがあると思って作っていますし、そういう思いで上映活動をしているので、ぜひ最後まで見ていただきたい」と毎回観客に呼びかけたという。「東京公開はちょっと緊張しています」と漏らすが、東京をはじめ大都市に住む地方出身者にはことさら響く作品だろう。
次回作の構想も進んでいるが、「実(じつ)が自分の手によってできていくことは本当に面白いんです」と今後も農業を続けることに変わりはない。「生活しながら歌う、田植え歌みたいなものが映画でもあっていいんじゃないかと思うんです。それがいろんな地域であったら、映画はもっと面白くなると思います」とこれからの映画製作の方向性を語った。
「ひかりのおと」は、2月9日からオーディトリウム渋谷で公開。
(C)陽光プロ
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