消えゆく見世物小屋一座に寄り添うドキュメンタリー 奥谷洋一郎監督に聞く

2012年12月7日 13:00

「ニッポンの、みせものやさん」の一場面
「ニッポンの、みせものやさん」の一場面

[映画.com ニュース] 新宿・花園神社の酉の市の名物として知られ、最後の一軒と言われる見世物小屋一座である大寅興行社の生活と歴史を追ったドキュメンタリー「ニッポンの、みせものやさん」が、12月8日から公開される。長年一座と交流を続けている奥谷洋一郎監督に話を聞いた。

1978年生まれの奥谷監督は、「ソレイユのこどもたち」で山形国際ドキュメンタリー映画祭2011アジア千波万波部門特別賞を受賞した新鋭監督として知られているが、一座の人々との出会いは、学生時代のアルバイトがきっかけだ。当時から映画製作を志していた奥谷監督は「せっかく出会ったのだから伝えたいという思いと、とにかく撮ってみたかった」という情熱からカメラを回すことを決意する。一座の了承は得られたものの「見世物小屋が見せものになりたくない、舞台裏は隠して謎のままにしてほしい」という条件が出された。

映画は、親方家族と太夫と呼ばれる出演者、そしてその家族からなる一座の巡業の模様や過去の写真、インタビューを中心に構成され、ナレーションを奥谷監督本人が務めた。「作品の印象とは距離があるかもしれませんが、初めて見世物小屋に出会った大学生くらいの頃の僕をデフォルメして伝えているつもりです」とその意図を明かす。また、見世物小屋の興行がにぎやかだった時代に大寅興行社のライバル社で働いた人たちとの思いがけない出会いと別れも経験し、そのやりとりも収められている。

奥谷洋一郎監督
奥谷洋一郎監督

撮影当初は、物珍しい見世物小屋を記録として残したいという思いも強かったそうだが、10年以上にわたり一座と共に生活をし、その気持ちは変わっていったという。「一座の人たちの、自分たちの時代はこれで終わっていくという考えを肌で感じたんです。それだったら、流れに抗うことなく、寄り添っていこうという気持ちになりました。僕は彼女たちに出会っただけで満足で、やめないでほしいとか、ずっと撮影して歴史に残したいとか、そういった気持ちは今はありません」。

一座はテレビをはじめとしたマスコミからの取材はほとんど受けないことでも知られている。ドキュメンタリー作品として完成できた理由を「若い子が趣味の延長でやっているんだろうからまあいいか、と思われていたんじゃないでしょうか」と謙そんするが、穏やかな語り口からにじみ出る奥谷監督の人柄が、インタビューで彼女たちの素直な本音を引き出したように感じられる。本作で見世物小屋に初めて触れる観客も多いのではと向けると、「僕の視点としてこういう作品に仕上がりましたが、まだ見られるので生でも見てください」と笑顔で話した。

日本の祭とともに発展し、そして時代の流れと共に消えゆく見世物小屋の長く深い歴史と、誇りを持って人々を楽しませてきた一座の人たちの心意気をぜひスクリーンで見つめてほしい。「ニッポンの、みせものやさん」は、新宿K'sシネマで12月8日から公開。

(映画.com速報)

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