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アピチャッポン・ウィーラセタクン監督が来日、新作「メコンホテル」を語る

2012年11月27日 12:45

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アピチャッポン・ウィーラセタクン監督
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督

 [映画.com ニュース] 「ブンミおじさんの森」でタイ映画初のパルムドールを受賞したアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の新作「メコンホテル」が11月26日、開催中の第13回東京フィルメックスの特別招待作品として東京・有楽町朝日ホールで上映され、来日したウィーラセタクン監督が観客とのQ&Aに応じた。

タイとラオス国境を流れるメコン川に面したホテルを舞台に、ウィーラセタクン監督と撮影隊が映画のリハーサルを行いながらも、脚本のセリフとは別に俳優たちがそれぞれ話をしたり、劇中劇として人肉を貪る幽霊のカットが挿入されたりと、メコンの雄大な流れと、ウィーラセタクン監督が10数年ぶりに偶然再会したという学生時代の友人が奏でる美しいギターの音色をバックに、現実とフィクションが交差する物語。

本作を「友人たちとの親密な関係性の中で作った、私の心に近い大事な作品です。私にとって映画は夢の再現、部分的には現実の再現で、できあがるものは夢なのです」と紹介、けがをした女優を見舞いにいく際に使ったホテルを舞台にしたという。劇中劇として俳優陣が演じているのは、ウィーラセタクン監督が2002年に脚本を書いた「エクスタシー・ガーデン」という幽霊の母娘を題材にしたSF作品で、娘と600年の輪廻を繰り返した男と娘の恋の顛末を描いた。

観客からドキュメンタリーはどの部分かと問われると、「映画の仕事をすればするほどドキュメンタリーとフィクションの間を行き来するだけではないかと思うようになった。例えば『007』を見ても、ジェームズ・ボンドを演じている人を記録した、人間の営みのドキュメンタリーだと考えられる」と持論を述べ、本作におけドキュメンタリーは、「エクスタシー・ガーデン」のリハーサルのシーンだと説明した。

劇中で女優がラオス難民について語るシーンについての質問には、「常々フィクションとドキュメンタリー、国と国などを象徴する“ボーダー”というものに興味を持っている」と話し、「(タイとラオス国境の)メコンは私の故郷、かつてラオスとタイは兄弟のようでしたが、メコンでは暴力的な事件や歴史も持っています。70年代の戦争でたくさんの難民がやってきました。また、メコンには遺灰を流す習慣があり、ボーダーは物理的な物だけでなく、私にとっては生きる人と死んだ人の境界線も表しているのです」と作品の舞台への思い入れを語った。

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