難病を克服した奇跡の双子アナベル&イサベル「日本の臓器移植にも希望を」
2012年11月9日 13:00
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[映画.com ニュース] 難病を乗り越えた日系双子姉妹の軌跡を追ったドキュメンタリー「ミラクルツインズ」(マーク・スモロウィッツ監督)が、11月10日に公開を迎える。講演のため来日したアナベル・ステンツェルとイサベル・ステンツェル・バーンズの双子に、本作に秘めた思いを聞いた。
「嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)」(通称CF)という肺の遺伝性難病をもって生まれてきた日系の双子姉妹、アナベル・万里子とイサベル・百合子。幼い頃から呼吸困難や肺の感染症などで入退院を繰り返しながらも、互いに支え合い、そろって名門スタンフォード大学を卒業した。しかし、依然として肺の臓器移植だけが2人が生き残ることのできる唯一の希望だった。姉のアナベルは、「私たちは“共生”関係。支えあっていかないと生きられなかった。お互い競争心が強かったのでそれによってどんどん前に進めたし、きっと双子じゃなければずっと前に亡くなっていたと思う」と胸の内を明かす。妹のイサベルも、「どんな人にも困難がある。私たちはそれがたまたま病気だったけど、何か良いことを探して、どういう風に人生を変えていけるかというのはみんな同じ。つらい時は学ぶ機会になる。寂しい時もあるし怒りもあるけど、やっぱり大切なことはポジティブでいること」と前向きだった。
幸運なことに、やがて2人は臓器移植によって健康な肺を手に入れ、不可能だったスポーツをすることまで可能になった。その後は自分たちの病気や臓器移植の必要性を多くの人々に伝えるため、それぞれソーシャルワーカーとなって支援活動を続けている。アナベルは、「臓器提供の後に何ができるかを理解することが重要で、映画はその成功例を提示している。学校に行けた、ハイキングができた、子どもを産めた、家族を作れた。移植後も心配のあまり家に閉じ込めちゃうと、一般の人々から成功例として認められないのではないかと思う」と指摘。イサベルも、「若い頃はもちろん病気がイヤだったし、自分の体も嫌いだった。だけど生きているだけで恵みだし、本や映画になってたくさんの人に希望を与えられたことはとてもうれしい。『あなたたちの我慢強さや前向きな姿勢にインスピレーションを受けた』と言ってもらえると、まるで私たちの病気は良いことだったみたい」とあっけらかんと笑った。
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日本では、さまざま理由から臓器移植に対して拒否反応を示す人々も少なくない。アナベルは、「映画を通して日本の状況を知ったアメリカ人は、とても大きなショックを受けた。基本的にアメリカでは臓器提供は良いこととされている。文化や宗教は大きな要素だし尊重するけれど、死後も魂が生き続けているとして、私は人を助けたことでその魂を救済できるのではないかと考える」と訴える。自らの痛々しい体やつらい体験を赤裸々に映画で明かしていることも、「日本の患者さんが心配なんです。日本人は自分のストーリーをさらけ出して人に見せるというのは苦手かもしれないけど、たくさんの人に伝えるためには個人的な物語を語っていかないといけない。日本の患者さんにも希望を与えたい」とはるか遠い第2の故郷・日本を思ってのことだった。
イサベルは、「難病をもった人たちは臓器移植のおかげで希望がもてる。それは糖尿病でも腎臓病でも、色々な病気について言えること」と臓器移植への理解を求める。そして、「アメリカの社会はとてもオープンで、誰にでも公平のチャンスがあった。苦しい時もみんなの温かい支援に癒され、同じ病気で苦しむ仲間たちや家族から大きな力をもらった」と周囲への感謝を忘れない。そのポジティブの秘訣を聞いてみると、「私たちが幼い頃からこんなにポジティブでいられたのは……遺伝かな?」と同席した母親のハツコさんに問いかけた。ハツコさんは、「2人が40歳にもなってこんなに元気に生きているなんていまでも信じがたい。臓器移植というチャンスを与えられたことはやっぱりミラクルだと思う。本当に感謝の言葉が見つからない。それを無為にしないで頑張っている彼女たちも偉いし、一生懸命生きている生きざまを見てほしい」と語った。
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