ニック・カサベテスが新境地を開いた「イエロー」主演女優が語る撮影秘話
2012年10月28日 12:30
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[映画.com ニュース] 第25回東京国際映画祭コンペティション部門に出品された「イエロー」が上映され、ニック・カサベテス監督とともに脚本を担当した主演のヘザー・ウォールクィストに話を聞いた。
ロスで安定剤に頼りながら生活している女性が、田舎に住む家族と向き合い、過去のトラウマに向き合っていく姿を描く。シエナ・ミラー、メラニー・グリフィスが共演、カサベテス監督の母、ジーナ・ローランズが共演する。
「リアル感を出すために、髪を洗わなかったり、ノーメイクでも撮影したわ。この作品ためには自分のエゴは入れないと決意したの。だから映画の後は、本当に何も残らないほど空っぽになったわ」。情緒不安定ではあるもの、自身の幸せに向かって突き進もうとする主人公メアリーに共感する女性は少なくないだろう。ウォールクィストは、「私の中のあなた」でも存在感を見せていたが、本格的な主演作は今回が初ということで、並々ならぬ気合いが伝わってくる。
カサベテスとは「ジョンQ 最後の決断」で知り合い、その後婚約。公私に渡るパートナーだ。「私が主演でなければ作らないつもりだったの。私たちがやりたい方向でやらなければ。それがインディペンデント映画なのだから」ときっぱり。「スタジオ映画は、いつも誰かがこれやるな、あれやるなと言うけれど今回は一切制約なし。だから、ギャラは少なくてもこの映画にかかわったすべての人は、自ら進んで参加したの。今回出演したキャスト陣はみんなオファーを快諾したのよ」と笑顔で話す。

税金対策として故郷のオクラホマで大半のシーンを撮影した。資金難で撮影を中断することもあったそうだが、カサベテスがカジノで3万ドル勝ち、スタッフの賃金に充てたという裏話も披露した。メークや衣装も自分たちでまかなったのだという。「本当に何もないところ始めたの。私たちの家を失くしたっていいという気持ちだった。でも、やりたいという気持ちの方が勝っていたのよ」。
自宅を失っても映画を作り続けたいという気概は、ニックの父、ジョン・カサベテス譲りなのだろうか。「多分そうね。ニックは編集室で育って、毎週家を失くしているような状況だったと言ってたわ」。そして今回、コンペ作品の審査委員長は“インディペンデント映画の神”と呼ばれるロジャー・コーマンが務める。「ニックはロジャーのもとで働いたことがあったのよ。ハリウッドが大恐慌の時代に、ロジャー・コーマンだけが映画を作っていたの。だから当時の失業中の映画人はロジャーに仕事をもらいに行ったのよ。だから選ばれて、興奮したわ」と笑顔で語る。
本作では薬物依存や家庭問題など、決して軽くはないテーマを盛り込んでいる。「この作品に込めたメッセージはとてもクリアよ。人生は忍耐だということ。誰かに起きたことがほかの人に起きるかもしれない、だから人をジャッジしちゃいけないということ。忍耐を持って、寛容と優しさのある世界は素晴らしいと思うの」。
さすがハリウッド女優と思わせるようなセクシーでゴージャスな外見を持ちながらも、会見やインタビューでは感極まって涙を浮かべるなど繊細な一面を見せたウォールクィスト。本作を代表作として女優業にまい進する今後の活躍が楽しみだ。
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