あこがれは“極妻” 中越典子が「悪の教典」でつかんだ手ごたえ
2012年10月19日 09:00
[映画.com ニュース] 「海猿」シリーズで国民的ヒーロー・仙崎大輔を演じてきた伊藤英明が、新作映画「悪の教典」で、想像を絶する悪役──人気教師にしてサイコパスの蓮実聖司という意外な役に挑んでいる。その映画の序章として蓮実の過去が描かれるドラマ「悪の教典-序章-」で、蓮実の魔の手に落ちてしまうヒロインを演じる中越典子が、蓮実がどれほど魅力的で恐怖的な存在なのかを語った。(取材・文/新谷里映、写真/本城典子)
中越が演じるのは、蓮実が勤務する高校に新しく赴任してくる、スクールカウンセラーの水落聡子教諭。教師からも生徒からも信頼され、人気のある蓮実に好意を持つが、その裏にはゾクッとする別人が潜んでいる。
「蓮実先生は私の演じる聡子の前では誠実で真摯な男性なんですが、もの凄く裏の顔があって……。表の顔は優しくて真摯であるだけに、より恐ろしさを感じてしまうんですよね。そんな蓮実先生にまんまと騙されていく、落とされていく聡子という女性は、(演じるにあたって)すごく興味深かったです。ただ、ドラマでは蓮実先生のあからさまな狂気を見せきらない。ドラマで狂気を匂わせて、映画で明らかになる。(映画につながる)意味のある深い作品であるからこそ、水落聡子を演じることに気合いが入りました」。役者のスイッチを押してくれる役だったと語り、蓮実役の伊藤のパワフルさにも「圧倒された」と振り返る。
「伊藤さんは完全に蓮実を自分のものにしていて、蓮実だったらこうするよね? こういうことしないよね? この作品に興味を持ってもらうには……と、役に関しても作品に関しても深く読み込んでいました」。撮影現場での伊藤の存在感、役へのこだわりは相当のもので、作品にかける熱い思いは自然とキャスト、スタッフに伝播していった。また、蓮実の悪の顔が際立って映し出されるのは、「伊藤さんが『海猿』を何年もやり続けた人だから裏切りが響いてくると思うんです。そういう意味でも伊藤さんにとってこの作品はとても大切な作品。だから熱かった! 本当に熱かったですね」と説明する。その言葉の裏には、役者として熱くなれる役にめぐりあえる「羨ましさ」も含まれ「私も役者として裏切っていきたい」と、瞳の奥にギラッとした輝きが浮かぶ。そして、挑戦したい役があるのだと熱い思いを口にする。
「私、“極道の妻たち”の世界感が大好きで、いつか任侠ものに出演してみたいんです。女性なのに男性に頭を下げさせる、けれど本当は愛する男性のためにやっていて……その生きの良さ、格好良さがたまらなく好きなんですよね」。自らのイメージを壊していきたいという中越の希望は、今作でもかなえられる。それは、もうひとつの役、蓮実を執拗に追い回す釣井先生の妻・景子役だ。
蓮実が意図的に作り出す、白馬の王子様のような蓮実に恋をし、結果的に操られてしまう純情な聡子に対し、景子は自由奔放で感情のまま生きる強い女性。景子の登場シーンは決して多くないものの、「中越典子ってこういう役も似合うんだ」と驚いてしまうインパクトある役どころだ。本人も「1人2役、しかも両極端な役を演じられたことがうれしい」と声を弾ませ、なかでも最も注意して見てほしいと挙げたのは、意外にも顔が映っていないシーンだった。「完成したドラマを見て、景子の手のシーンが好きだなあって思ったんです。照明さんがものすごく綺麗に妖艶に映してくれて。顔は出ていないけれど、あの手はたしかに私がやっています(笑)」
伊藤英明が演じる蓮実の表と裏の顔、中越典子が演じるタイプの異なる2人の女性、さまざまなギャップの詰まった「悪の教典-序章-」は、映画「悪の教典」をより深い味わいへと昇華させる。
ドラマ「悪の教典-序章-」はdマーケットVIDEOストア&BeeTV で配信中。DVDは10月19日発売。映画「悪の教典」は11月10日から公開。
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