中山美穂と向井理の「ドキッ」がちりばめられた「新しい靴を買わなくちゃ」
2012年10月5日 13:15
[映画.com ニュース] ヨーロッパでは、“靴”が幸せになれる場所へ連れて行ってくれる、だから女の子は素敵な“靴”を──という言い伝えがある。「新しい靴を買わなくちゃ」も、立ち止まっていた場所から一歩踏み出させてくれる、そんな物語だ。そして、幸せを届けてくれるのは、中山美穂と向井理。パリで偶然出会い、ひかれていく男女をロマンティックに演じている。(取材・文/新谷里映、写真/片村文人)
初共演となる2人が扮するのは、パリ在住の編集者のアオイ、ある理由でパリを訪れるカメラマンのセン。偶然出会った彼らの3日間のラブストーリーを描くなかで、中山と向井が大切にしたのは、アオイとセンの心が自然と近づいていく恋の感覚。そのために中山は、あえて役者・向井に関する事前情報を入れずに撮影に臨んだという。くしくも撮影初日はアオイとセンの出会いのシーンが用意され、「セン君が目の前に現れた! という感じでしたね。向井さんはセン君そのままでした。新鮮な空気でスタートがきれたので、そのままの流れで(2人の)空気感を作っていけたと思うんですよね」と、出会いを懐かしむ。向井も、「最初からアオイさんでした」と、当時の気持ちを思い起こす。互いに抱いていた印象がぴたりと重なる、まさにベストキャスティング、日本映画史にベストカップルがまた一組誕生したというわけだ。
アドリブを取り入れた臨場感あふれるシーン、リアルな会話、さすがは恋愛ドラマの名手と言われ、人気脚本家として数多くのドラマを手掛けてきた北川監督が生み出す世界観。中山は、「北川さんの書いたセリフを話すのが好き」と愛しい眼差(まなざ)しで北川ワールドを語る。「脚本を読んだとき、本当にかわいい(ストーリーだ)なと思ったんですよね。おとぎ話的な要素のあるこの手のスタイルの物語って、日本映画にはなかなかないと思うんです。そして、おとぎ話のようでもあるのにアオイは悲しいもの(過去)も持っていて、それがリアルでもあって……そういうアオイの心情を笑顔で表現できればいいなと。どのセリフも好きですが、酔っ払って公園を歩いているときの『たいていのことは大丈夫よ』というセリフが特に好き。なんだか実感こもっちゃったんですよね(笑)」。演じている中山がリアルだと感じたように、観客の心にもアオイのセリフひとつひとつが深く突き刺さるだろう。
一方、向井は「かわいらしいストーリーであるのに核心を突いている」と、中山に共感しつつ北川ワールドを男目線で分析する。「どこか少女漫画っぽい要素も持ち合わせているので、リアリティだけで体現するのではなくメルヘン的なものも必要だと思ったんですよね。実在の人物+理想像=セン、というか(笑)。恋愛に関するセリフの端々にリアリティも感じました。しかも核心を突いている。なので、センの悩みを100%理解できていないとしても、なんだか分かるんですよね。なかでもピアノを弾きながら、お酒を飲み、アオイさんに気持ちをはきだしていく一連のセリフとシーンが好きです。あと、最初は転んだり酔っ払ったりしていたアオイさんとは違う一面が垣間見られる、ドレスを着て登場するシーンはドキッとしましたね」。向井自身が感じたその「ドキッ」は、もちろんセンというキャラクターにも投影されている。
いくつものドキッとせつなさが詰まったこのラブストーリーの結末を、向井は「終わりのようで始まりのようでもある」と、なんとも興味をそそる言葉を選び、中山は「私自身が“新しい靴を買わなくちゃ”って思えた」と、寄り添い背中を押してくれる映画だと伝える。このラブストーリーは、恋をしている人、かつて恋をしていた人、これから恋をしたい人すべての人の足(心)にぴたりと合う靴。どれだけぴたりと合うか、そのはき心地を劇場で確かめて。
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