「ニッポンの嘘」長谷川三郎監督、90歳の報道写真家に最敬礼
2012年8月13日 20:00

[映画.com ニュース] 報道写真家・福島菊次郎に密着したドキュメンタリー「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」の公開を記念し8月12日、長谷川三郎監督とカメラマンの山崎裕が都内の劇場でトークイベントを行った。
敗戦直後の広島で被爆者家族の苦悩を撮り続けた福島は、それ以降も三里塚闘争、東大安田講堂、70年安保、あさま山荘事件など、時代を象徴する数々の事件を25万枚以上の写真に収めてきた。しかし、保守化する日本社会やメディアと決別した福島は、無人島での自給自足生活を経て、愛犬ロクとの慎ましい暮らしを始める。そして胃がん手術を受け、人生の最期を覚悟し始めた11年、東日本大震災を機に再びカメラを手にすると原発事故が起きた福島県へと向かう。
福島を撮れるのはこれが最後のチャンスだと思った長谷川監督は、「先輩である山崎にアドバイスをもらい、とりあえず菊次郎さんに会いに行った。権力に物怖じしないで戦ってきた人だからすごく怖い人なのかなと思ったけど、実際会ってみるととてもチャーミングな方だった」と述懐。そして、「『何でも撮って構わない。レンズで見た戦後なら覚えているから』と初日に合鍵を渡され、それから毎朝、寝ている菊次郎さんに声をかけるところから撮影が始まった。今の時代に何ができるのかと常に追求する日常がとても魅力的だった」と赤裸々な撮影を振り返った。
3年間に及ぶ撮影を経て、「かなわないなと思ったところは、取材した人をひとりひとり克明に覚えていること。そのすべての人の思いを背負い込み、愚直なまでに貫いて生きている」と最敬礼。「たくさんの写真を残されているけれど、それはいったい何なのかと尋ねると『ニッポンの嘘』という言葉が返ってきた。この言葉がこれほどリアルに感じられる時代はない。どうやって声をあげたらいいか分からない若者は、この国と戦ってきた菊次郎さんに出会ってほしい」と語りかけた。
数々の映画で撮影を務めてきた山崎は、「この企画をテレビでやるとしたら色んな規制を受ける。部分的には作れても、総体を伝えることはまず難しい。映画館でドキュメンタリーを見るというのが浸透してきているので、上映用の作品にすれば可能性があると思った」と真意を明かした。そして、被写体を映すとは、「その世界を丸ごと引き受ける。全て撮りこぼさずカメラを回し続けた。その場に立ち会わせてくれたこと、それがこの作品の出発点だった」と振り返る。福島と18歳差の山崎は、「福島さんの撮ってきた時代は僕の青春時代でもある。彼が他の報道写真家と違うのは、その身の置き方。単なる事実を報道するのではなく、そこに強引にでも入り込む。その姿勢は動画もスチルも変わりない。福島(原発事故)以降の日本がどう変われるのか、一緒に考えていきたい」と真摯(しんし)に語った。
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