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アカデミー賞外国語映画賞ノミネートの感動作「ぼくたちのムッシュ・ラザール」監督に聞く

2012年7月13日 19:00

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来日したフィリップ・ファラルドー監督
来日したフィリップ・ファラルドー監督

[映画.com ニュース] カナダ・モントリオールの小学校を舞台に、自殺、政治亡命、学校教育のありかたなど、現代社会における普遍的な問題を絡めながら生と死を見つめ、生徒と教師の心の再生を丁寧に描いた「ぼくたちのムッシュ・ラザール」が7月14日公開する。真摯(しんし)に児童に向かい合う教師の姿と子どもたちのみずみずしい演技が観客の心を打ち、カナダの映画賞主要部門を独占、その後、第84回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるという快挙を成し遂げた。来日した新鋭フィリップ・ファラルドー監督に話を聞いた。

教室で自殺した女教師の代理として雇われたアルジェリア移民のバシール・ラザールは、朴訥(ぼくとつ)ではあるものの、担任を亡くした悲しみにくれる生徒たちとまっすぐに向き合い、子どもの心を開いていく。しかし、ラザール自身も悲しい過去と秘密を背負っていた。

ラザールは母国で激しい内戦を経験し、亡命者としてカナダにやってきた。悲惨な過去を持ちながらも、知的で冷静なラザールのキャラクターをこう説明する。「彼は自分の国へは帰れない、自分の過去と断絶しなければいけないという悲しみに埋没してしまうのではなく、喪に服している子どもたちの力になろうと考えるのです。外国で移民として生き、品位を保っている人たちは、自分が受け入れてもらっている社会の重荷になりたくないという思いを持っているのではないでしょうか」

死の悲しみを扱った物語ではあるが、子役たちの生き生きとした演技が印象的だ。「もともと大人向けに作った映画ですが、不思議と子どもたちは、教室は自分たちの世界だと考えて反応してくれました。アクションもコミカルな場面もないので、子どもたちの心を引き付けることができないのではと思っていたのですが、自分たちの気持ちと近いものを感じるようで、すごく興味を持ってくれました」と述懐する。

(C)2011 Tous droits reserves
(C)2011 Tous droits reserves

マニュアルに沿ったような現代的な授業を拒み、子どもたちにバルザックの古典的名作を読ませるラザール。劇中では彼が愛読する書籍や新聞などを映し、文学への造詣が深く、高い教養を持ったラザールの人間性を巧みに表現する。

「フランソワ・トリュフォーもよくやっていたことで、彼は本のページそのものを撮影することもありましたが、僕も人物と本との関係が好きなのです。初めて誰かの家に行く時、その人が持っている本を見るとその人のことがわかる気がします。バシールが家に帰った時に読んでいるのは、ケベックに住んでいるハイチ移民が書いている本です。私も日本に来るにあたって、『ノルウェイの森』などいくつか日本の本を読みました。自分を迎え入れてくれる社会を知るために本を読むことは大事だと思うのです」

世界25カ国以上で上映され、絶賛された本作。監督にとっては思いもかけないヒットになったようで、「せいぜいモントリオールの3~4館で2週間程度上映されて、観客も限定された映画になるだろうと思っていたのです」と謙虚に明かす。そして「なぜ世界の皆さんに受け入れられたのかと考えると、やはり普遍的なテーマを扱い、学校を舞台にしていることが理由なのかもしれません」と笑顔で語った。

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